忍者ブログ
二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
[1774]  [1773]  [1772]  [1771]  [1770]  [1769]  [1768]  [1767]  [1766]  [1765]  [1764
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

十二国記パロです。
王様黒鋼と麒麟ファイ。
元々禁軍か州軍あたりの将軍だったっぽい黒様は反乱がおこったら真っ先に自分が飛び出していく感じです。
十二国記知らない方には不親切極まりないお話。

拍手ありがとうございます。

では下からどうぞー。









早く、早く、と願う心とは裏腹に体は上手く動いてくれない。制止する声を振り切って、黄金の気配の元へと走る。
泣きたいほど、慕わしく懐かしいようなそれは、同時に途方もなく恐ろしいものだ。それでも、ファイはそれを失っては生きてはいけない。
近づけば近づくほど、体を蝕むのは血の気配だ。尊いものとして扱われながら、数多の妖魔を使役しながら。この身はただそれだけで上手く動かなくなるほどに脆弱だ。
仁重殿から庭院を抜けそのまま正寝へと突っ切っていく。もつれそうになる足を叱咤しながら、ひたすらに歩みを続ける。
少しでも気が緩んでしまえば、たちまちに赤く錆びついた色に脳裏の全てが支配されてしまう。
「嫌だ」と知らず知らずのうちに呟いていた。
嫌なのだ。もう。いくつもの命がこの手のひらから、指の隙間から、零れ落ちていってしまうのは。


常にない荒々しさで堂室の扉を開けると驚いたように人々が振り返る。宰輔、と誰かが呼ばわったが、今のファイにそれは聞こえもしない。
真っ直ぐに見つめるのはただ一人だけだ。
燃え上がる炎のような、赫。紅玉の一番深い色を集めたような瞳を見つけ、ファイはその場にへたり込んだ。
上背のある男が苛立つようにファイを睨みつける。気の弱いものならばそれだけで竦みあがってしまうような苛烈さだ。
「おい」
怒ってもいい。怒鳴りつけられてもいいから。今はただ、ひたすらに彼の生きている証だけが欲しい。
「黒様…」
厭われることを心底恐れながら、それでもなお望まずにはいられない。大きく胸を喘がせてようやく声を振り絞ったファイに、男は呆れたように眦の険しさを幾分か和らげた。
「どいつでもいいから、この馬鹿をさっさと仁重殿に連れ戻せ。今にもぶっ倒れそうな顔をして。血がダメなくせにふらふらすんな」
男の声に促され、内小臣がファイをその場から連れ出そうとする。ファイは嫌だ、と頭を振って抗った。困惑する内小臣や女御らではファイに何をも強制することは出来ないのだ。
この世でファイに命令出来るのは一人だけだ。
「勅命だ。連れていけ。お前はそのまま牀榻から出てくんな」
そのただ一人であるところの男から命じられ、不承不承ファイは頷くしかない。ぐらぐらと眩暈に似た心地を覚えるのは辺りに漂う血の気配のせいなのか、己の意に反した主の命令のせいなのか。
体調の悪さにじわりと涙ぐみながらようやく頷いたファイに、男は呆れた表情を隠さない。
「返り血を落としたら一度顔を出す。だから絶対に牀榻から出るんじゃない」
かけられた声に今度は即座に頷くと、再度女御に促されて堂室から外へとでた。名残惜しげに堂室の扉から中を振り返る。

「黒様」

「なんだ」
ぽつん、と呼ぶと即座に応えが返ってきた。聞こえていたとは思わなくて、一瞬ファイはきょとりと瞳を見開く。
赤い瞳と視線がぶつかった。この世でたった一人のファイの主。
今更に、彼のその姿が自分の前から失われなかったことに安堵が押し寄せてくる。
「お帰りなさい」
「おう」
ファイの声に短く応えた男は、早く行けと言わんばかりにひらひらと手を振った。犬や猫でも扱うようなその仕草に、内臣が「主上」とたしなめる声が聞こえて、ファイは思わずくすりと微笑を零す。

ぱたりと扉が音を立ててしまったけれど、今度は恐ろしいほどの恐怖と寂寥感は襲ってこない。



PR
01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
最新記事
ブログ内検索
管理人
HN:
仮名
性別:
女性
趣味:
読書
自己紹介:
成人。
みかんの国出身。
エネルギー源は酒。
忍者ブログ [PR]