[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ついでに化学教師の中の人繋がりなネタです。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞー。
これは夢だ。間違いなく夢だ。黒鋼はそう思った。
けれど悲しいかな。彼の自覚とは裏腹に、夢はどうやら覚める気配はないようだった。
「こうのとり運輸のキャベツ便でーす」
「なんなんだそのネーミングは」
ありえねえ、と呟く黒鋼の眉間の皺など目に入っていないかのように、にこにこと笑っているのはいつもの如くファイである。
ただし化学教師としての白衣ではなく、運送会社の制服らしきものを着ていた。
これが現実ならばすっぱりと受け取り拒否して扉を閉めるのであるが、あいにくとそこは妙に不自由な夢だ。閉めるべき扉が見つからない。
「じゃあ荷物の受け取りをおねがいしまーす」
頭を抱える一歩手前の黒鋼の様子を華麗にスルーしたファイに、はい、と渡されたのは…。
「認知してください」
『出生届』と書かれた用紙を手に持った幼児だった。
ふわふわきらきらの金髪とくりっとした蒼い瞳。まるで宗教画の天使のような愛くるしさだが、どうにも不穏な発言はまんま化学教師のミニ版だ。
しばし無言で睨み合う。
こてり、と幼児が首を傾げた。
「認知して?」
断りたい。
「えー。黒様ー。ダメだよー。ちゃんと受け取ってくれないとー。あ!そうだー。この子とセットにしてオレたち二人で育てようよー」
やいやいと一気に騒がしくなったファイがずいっと突き出してきた荷物第二弾を見て、黒鋼は夢の中だというのに気が遠くなりそうだった。
「…」
無言できゅーっと黒鋼を睨むようにしているのは、どう見ても自分をミニサイズにしたような幼児だ。
実家に帰省するたびに酔った父親が昔のアルバムを引っ張り出してくるので、嫌というほど目に焼き付いている自分自身の過去の姿。それと寸分違わぬ存在は実に衝撃的だ。
「オレが育てようかとも思ったんだけどー。そうだよねー。やっぱり小さいうちから共同体制を見せて協調性を養うのもいいよねー」
「認知してくださいー」
「…」
…早くこの悪夢から目覚めたい。
切実な願いは目覚まし時計が鳴り響くまで続いた。
「あれー?黒様具合悪いー?」
「夢見が悪かったんだよ」
「嫌な夢だったら人に話しちゃえばすっきりするよー?」
「絶対言わねえ…!」