忍者ブログ
二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
[1164]  [1163]  [1162]  [1161]  [1160]  [1159]  [1158]  [1157]  [1156]  [1155]  [1154
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

堀鐔ストーカー化学教師設定です。

100000HIT記念リクエスト企画第5弾です。
お待たせし捲くっていて申し訳ない…。
みずしま様リクエストで「ストーカー化学教師ファイさんが少しだけ報われるお話」です。
頑張れファイ、陥落するまであと百歩くらい!

拍手ありがとうございます。


では下からどうぞ~。








「黒様~。一緒にお酒飲もうよ~」
おつまみもあるよー、と玄関先で呼びかけるファイに呆れ顔の黒鋼が無言で扉を開く。
インターフォンを鳴らせ、と口を開けようとしたところでファイに焼酎を示され、黒鋼の気勢が削がれた。

短く「入れ」とだけ言って小さな溜息交じりにファイを部屋に招き入れた。好きなものの前には誰だって多少甘い顔をしたくなるものだ。


レモンと香草だけで焼いた白身魚は、ともすれば水に近いほど淡白な焼酎によく合う。
ファイの料理の腕前だけは確かなことを黒鋼も知っているので、特に文句も出ずそれなりに和やかな二人だけの飲み会となった。
「けっこうさらっと呑めちゃうね~」
「飲みすぎんなよ。お前洋酒は平気なくせに日本酒や焼酎は酔っちまうだろうが」
「いや~種類にもよるんだけどねー。でもこれは平気そうだよー。するするーって呑めちゃう」
「いい酒ほどそんなもんだ」
そう言って黒鋼は呑みっぷりもさることながら、実に小気味よくつまみを口に運ぶ。
これほど豪快に食べてくれるならばそれはもう作り甲斐があるというものである。
ファイもつられていつもより早いペースでレモンを浮かべたグラスを傾けた。
同じ職場の同僚でもあるファイと黒鋼がこうして二人で顔を突き合わせて酒盛りをするのは珍しいことではない。
どちらも独身で酒好きである。外に出るよりもこうして気心の知れたもの同士気兼ねなく飲む方が安上がりで楽なのだ。
それでもファイの訪問に黒鋼が難色を示しがちなのはただ一つ。
ファイが黒鋼のことを「好きだ」と広言して憚らないからだ。
冗談はやめろ馬鹿を言うな、と黒鋼は散々に反論しているが、普段ふわふわ笑っている人間がしょんぼりと項垂れて「本当に好きなんだよ」としおれているのは何と言おうか、良心が痛む。
ストーカー紛いのアプローチは本職のストーカーも真っ蒼の緻密さで、プチどころか割と深刻な犯罪ではなかろうか、と黒鋼は時折自問自答する。
一方のファイは「だって好きなんだもん」と一言ですませてしまう。
本人には追い詰めているつもりはあまり無い。あまり、ということは僅かにはあるということだ。だってそれでなければ追い込む意味が無い。
早く諦めてオレのことを好きに…なってもらうのはまあ後としても恋人になってくれないかなー、と考えている。
そんなファイの本心を知れば、きっと「順番違えよっ!」と黒鋼は突っ込むのだろうけれど。
手順などこの際形式的なことよりも本質を満たす方が先だ、とファイは我ながら矛盾している主張を推し進める気満々なのである。
こと言論においては黒鋼を丸め込む算段は難しいことではない。
それをしないのは他の人間とは比べられない情愛があるからだ、とファイは思っている。
今日だってそうだ。

たまたま覗いてみた地元特産朝市だった。
黒鋼の好きそうな魚でも安く売っていれば儲け物。 そう思ってひょっこりと雑多な売り場に入ったのだ。
朝取りの新鮮な野菜や特産物が所狭しと並ぶ中、奥の陳列棚の隅っこにマニアの間で幻、と呼ばれる焼酎が隅っこに置かれてあるのを見たファイは迷わず財布から万札数枚を引っ張り出していた。
「これ高かったんじゃねえのか」
「そうなのかなあ?相場がわからないよー」
酒の価値を黒鋼が知らぬわけでもないだろう。誤魔化すファイに探るような視線を向ける。
けれど、ファイにとってはどうでもいいことなのだ。取り入ろうを考えたのではなく、ただ「喜んでくれるかなあ」と思ってのことだった。
そんな無防備な単純さを黒鋼も勘付いているからこそ、こうして傍にいることを許しているのだ。
「奢られっぱなしは性にあわねえ。何かで返す」
貸し借りの嫌いな彼らしい言い分だとファイも小さく笑った。無論、少しばかりの見返しを期待しなかったわけではない。
少しばかりの計算や打算もあってのことだ。
「えーとじゃあねー…ひとば…」
『一晩でいいからオレと懇ろになっちゃおー』
そう誤魔化し三割本気七割で言うつもりだったファイの前で思いもよらず黒鋼が穏やかな顔で笑っていた。
「…ひ」
「なんだ」
「…」
「…」
「……膝枕してクダサイ」
上機嫌そうに口角をあげてくつろぐ姿が、表情が。あまりに優しい顔だったから。それを馬鹿みたいな言葉で崩すのがとても惜しまれた。
自分でいったお願いにさすがに微妙だなあ、と考えて固まってしまっているファイの前で黒鋼が「なんだそりゃ」と苦笑する。
半ば以上断られることを予想していたファイにはそれだけでも予想外なのことなのに、困ったように黒鋼が「ほら」とファイを手招くので咄嗟に葉信じられないで間抜けな声が出た。

それでも、黒鋼の気が変わらぬうちに、とわたわたと傍ににじり寄り恐る恐る胡坐を組んだ膝に頭を降ろす。
男の膝枕なんぞ楽しくねえだろ、というのを無視してファイはそのままギュッと目を瞑った。
「お前やっぱり酔ってるだろ」
「…うん、そうかも」
じんわりと熱い頬を、酔ったからだと自分にも黒鋼にも言い訳して、ファイは瞳を閉ざし続けた。きっとこのまま眠ってしまっても、黒鋼は怒らない。
口先でブツクサ言って、きちんと面倒を見てくれる。
ファイは熱い頬を隠すように黒鋼の膝に自分の顔を押し当てた。


小さく寝息を溢し始めたファイを見つめながら黒鋼は困ったように苦笑いを溢す。
ファイがまた無茶な要求でもしてくるのかと思ったのだが、妙は妙だが案外可愛らしい要求だったことに安堵もしている。
くしゃり、と柔らかな金色の髪を撫でた。
ファイが起きている時にはとうていこんな真似は出来ない。
別段、ファイのことがどうしても嫌いだというわけではないのだ。
実のところ同性である、という忌避感が黒鋼本人にとっても大分薄いのが問題だった。

口にするとそれ以上に大問題に発展するのは火の目を見るよりも明らかなので、当然黙っているが。
 

PR
01 2025/02 03
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28
最新記事
ブログ内検索
管理人
HN:
仮名
性別:
女性
趣味:
読書
自己紹介:
成人。
みかんの国出身。
エネルギー源は酒。
忍者ブログ [PR]