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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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過去拍手エイプリルフール女体ネタの続きです。
タイトルは谷/山/浩/子の歌から拝借。











「貴方達結婚式はしないの?」

理事長は先日結婚報告とともに産休の申請を出した化学教師を見つめた。まだ平らなお腹には既に宿る命があり、その父親がぶっきらぼうながらも律儀に付き添っていたのは微笑ましいことだとも思う。

だがそのこどもの父親ときたら、結婚式はと尋ねた侑子に
「どっちも係累がいねえんだから、必要ないだろ」
などと女心の分からぬ発言をしていた。

いっそ学園ごと盛り上げてもいい、と面白半分、残りは若干の悪戯心と祝う気持ちとで、侑子はファイに結婚式がしたくないかと問うた。

「しましたよ?」
小首を傾げて不思議そうにファイは答える。
あら、と侑子は目を見張った。
「初耳だわ、いつ?」
結婚相手のとりつくしまもない態度とは真逆の答えに侑子は食い付いた。
先週の日曜日に、とファイは言うが、二人にそんな素振りはちっとも見受けられなかったのだから。
納得のいっていない侑子をよそにファイは日曜の『結婚式』を語り出す。


「黒様のご両親のお墓とオレの家族のお墓に行って、結婚のことと赤ちゃんのことを報告して…」


ふ、と不自然に途切れた言葉を侑子が怪訝に思い、ファイの顔を覗き込んだ。

笑顔を絶やしたことのない化学教師の微笑みなど見慣れていたはずだった。けれどその時の表情を見ることが出来るのは後にも先にも、きっとこれきりだろうと思う。
否、一人だけこの顔をこれから先も独占出来る人間がいる。


「…指輪くれて…皆に、大事にするからって言ってくれたんです」


普段からけして語彙の多い男ではない上に、愛情表現のそれとくれば皆無に等しいだろう。
その唯一の誓言が、既に黄泉路を辿ったとはいえ互いの最も大事な家族の前で行われた。偽りなどあろうはずがない。
同時にあの男がたったこれだけを言うのに、どれだけ苦心したことか。
「そう、いい結婚式ね」
分かるだけに急速に自分の考えがつまらないものになってくる。

「あたしの方が無粋だったかしら」
たったひとつの誓いだけの結婚式が、ファイには何より幸せだったのだから。
花嫁衣裳やブーケでは、手に入れられない幸せをあっさりと与えた男に負けたような気になるが、それが心地よいのも不思議だった。



「おめでとう」



幸せにおなりなさい。


愛の言葉には勝らずとも、ありったけの祝福の言葉を。
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