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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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拍手ありがとうございます。
お礼小話を今日中に変えたかったのですが、どうも一つ一つが思ったよりも長くなりそうなので…。
次の休日に期待。


日本国永住設定小話です。
以前書いた「希色」の続きになっています。


では下からどうぞ。





 


「オレも仕返しがしたいです」

天照と月読、二人の御前で晴れ晴れと言ってのけたのは金色の髪の客人。否、今となってはこの日本国の民ともなったファイだった。
すぐにくすりと帝の唇が綻ぶ。
「暴力沙汰は感心しませんわ」
制止するようでいながら、言葉とは裏腹に瞳に浮かぶのは悪戯めいた笑みの気配。
さて、と思案するふうであるのが、すでに胸の内が決まっているがゆえの遊び心であった。
だが、三人の思いもよらぬ人間が声をあげる。
護衛として傍に控えていた蘇摩が控えめではあるが「差し出がましいことですが…」と主の顔を微笑みながら見据えた。
「帝、ファイさんにはそうする権利があるのでは?」
無論、あまり乱暴なことは困りますけれど…と付け加えてしまうのは、昔から先達として黒鋼を見てきたがゆえに心配性が習いになっているのだろう。
「もちろんです。どこかの力押しの忍者さんとは違うんでー」
ファイがにこやかに答える。くすくすと忍び笑いを漏らす月読も止め立てする風はない。
となれば。
天照が鷹揚に頷いて見せたのが合図となった。


男が一人、白鷺城の廊下を足早に渡っていた。
身なりの良いその姿と所作に粗雑なものは見受けられないが、その胸中は穏やかではない。
常ならば白鷺城の妍麗なしつらえを目にするだけで、商人として特別に入場を許された身分は自尊心を満たし、気分も浮き立っていたであろうが今はそれどころではなかった。
内密であるが、との前置きで帝直々の呼びたてに参上したその身に浴びせられたのは、言葉こそ穏やかながらも叱責に他ならない。
遥か離れた上座と下座に隔たり、かたや平伏、かたや御簾越しとあってはその竜顔をちらとも見ることもあろうはずもないが、冷ややかな眼差しを想像するのは難しいことではなかった。
『当分頭を冷やすと良い』
最後にそう告げられたのは事実上登城を禁ぜられたに等しい。
やり場のない屈辱と怒りを持て余した男は最後の矜持と頭の片隅に残った保身で退座したのだ。


欲したのは世にも珍しい白鷺一羽。
金色の髪と蒼色の眼をもつその鳥はどうやら忍の囲い者らしいと聞いた。
男相手に何を酔狂なと笑ったが、いざそれを目にした時には合点がいった。
この世に金色に輝く髪があることも海を溶かし込んだ瞳があることも。話に聞いてはいたがそれが人間に備わっているのは男にとっては奇跡のように思えた。
だからこそ美のなんたるかすら分からぬ無粋な輩の手元に置いておくのが大層惜しまれたというだけのことであるのに。
粗暴な男の寝床から引き上げ、飾り立ててやれば大層感謝するだろう。もしかしたらその白皙の顔に微笑みを浮かべて自分を見るかもしれない。そう思ったのだ。

だが、その価値に見合うだけの金子を手にした使いはあろうことか忍に手を挙げられ、自分自身も帝の不興をかうこととなった。

『そなたが買い取ろうとしたのは、とある方から月読がお預かりした大切な客人。
よもや我が城の客人を、春を売るものたちと同じに考えたのではないでしょうね』
帝の冷ややかな声が耳の奥に蘇る。
まさか姫巫女の預かり者とは知らなかった。
そう悔やむ胸のうちと未練がましい執着とがない混ぜになったまま、廊下を歩む足取りは段々重くなっていく。
城へ足を踏み入れることを許された自身の「格」がこの期に及んでもまだ惜しい。

のろのろと歩む廊下からは庭を挟んで対面の別の渡り廊下が見渡せた。

きら、と光をはじくものが目の端に映る。
反射的に視線が追いかけたものは淡い黄金の髪。結わうこともせず背に流したそれが白い衣の上で風に揺られるがままに遊ぶ。
男性が着用するには珍しい、長くおとされた袖が動きのたびにひらひらと舞う。
欲していた者がまさに目と鼻の先にあることに男は目を奪われた。
その時、金色の佳人の顔がぱっと笑みに綻んだ。嬉しそうに瞳を向ける先につられて目をやれば、そこには大柄な漆黒の忍がいた。
戦装束のままの男の目は燃えるような真紅で、射るような瞳の激しさに男は身の竦む思いがするが、佳人はそんなことを気にする風もなく忍の傍に駆け寄る。

するりと逞しいその背に白い袖が回された。忍もごく自然に佳人の腰に手を回す。
何か言葉を交わし、最後に佳人がねだるように忍を促すのが見えた。
眉を寄せた忍に一層密着するように身を寄せた佳人が仰向いて、二人の唇が重ねられるのを男は呆然と見つめていた。
忍の太い腕が細い体を抱き込むように角度を変えた時。


男と視線の合った蒼い瞳が「してやったり」と言わんばかりに笑んでいたのを、男ははっきりと知らされた。

 

 

「まさか蘇摩さんが後押ししてくれるなんて思いませんでした」
ファイの言葉に、忍という戦闘を生業とする人間とは思えない穏やかな微笑が返される。
唇を開きかけて、少し言いよどむように蘇摩が眉を寄せた。幾ばくかの逡巡の末、言うことに決めたのだろう。蘇摩が今度ははっきりと唇を開いた。
「忍にとって…いえ、戦うものにとって武器の喪失や腕を欠くということは、それ自体死を意味します」
目を見開くファイに
「ファイさんを責めているわけではありません」
そう穏やかな声が降る。
「黒鋼は自らそれらを手放したのだと聞きました。貴方を…命を懸けるべき相手だと決めたのならば姫様も私もそれを尊重したいと思います」
だからこそ、と続いた言葉の中に静かな憤りが潜むのが分かった。
「黒鋼は日本国一の忍です。その忍が命を懸けたものを踏みにじるような真似を、同じ忍としてそのままに捨て置くわけにはいきません」
これは自分たちの誇りにかけてのことだとそうファイに告げる蘇摩の顔は姉のような慈愛に満ちていた。
また、ファイが気に病むと思ったのか、彼女はいつもの笑顔で言う。
「それに黒鋼は帝や月読様の身をお守りする立場。帝の忍軍の筆頭なのです。
黒鋼の腕と刀の価値を軽んずるは帝や姫様のお命を軽んずることに繋がりはしませんか?」
そう言われてしまえばもうファイに返す言葉はない。改まって礼を述べるのも却って気遣いを無碍にするようだったので、ファイは笑みの中にそれを留めた。
「蘇摩さんは本当に天照様がお好きなんですねぇ」
「ファイさんもでしょう?」
珍しい蘇摩の茶化すような声に何一つ気負うことなく、はい、と答えた。

 

見られていることを承知で(というよりも見せ付ける目的で)重ねた唇が離れた。
「で」
「?」
「こんなマネして一体何になるってんだ」
「そりゃあ、思い知ってもらわないと」
白い頬にかかる金糸を梳いてやりながら、少し伸びたなと黒鋼は思った。
ファイが日本国で過ごした時間の表れに気づくのは悪い気はしない。
髪を梳く手に猫のように頬を擦りつけてファイが目を細めた。

「オレが君のモノだってことを」

その言葉に赤い瞳が楽しげに眇められる。獰猛な獣の笑みにも似ていて、ファイの背中を陶然とした欲が這い上がる。
「上等だ」

噛み付くような口付けを受け入れた時には、ファイは目の前の男以外のことなど意識に残らず、もうどうでもよくなっていた。


 

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