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今日はアンソロ原稿優先のため春望は次に回します。
以前連載物を書いていたときに友人に「人狼BBSのログ二件同時読みと長編と小話を同時進行でやった」と話したら速攻で「とりあえずログ読みやめて書け」と突っ込まれました。
たしかに気分転換にしてもヘビーすぎると自分も思っていました(笑)。流し読みでも一つ読みきるのに三時間かかるんだもんなあ…。
とりあえず今日は集中する、で、余力があったら長編の下書きも進める、以上。
拍手ありがとうございます。
メッセージ、コメントも大変ありがたく読んでいます。
では下からどうぞ~。
ぬるま湯で凝った細い髪をゆっくりと梳いてやる。
いつになく丁寧な手つきになるのは抱え込んだ子どもの頭が小さく、首の細さなどはうっかりと力を入れればそのまま壊してしまいそうだからだ。
どうやら双子はお互いに墨をかけ合ったらしい。ユゥイの手元が狂ったおかげでファイの頭はユゥイに比べればまだマシだった。
汚れているのはほとんどが毛先の部分だったので、何度か洗い流してどうにかいつもの色を取り戻す。
一方ユゥイの方は頭の半分以上が墨を吸い、ぐっしょりと重たく髪の毛の先から黒い雫が垂れているような有様だった。
髪の根本の方まで潜り込んだ生乾きの墨は厄介なことになかなか落ちてくれない。
指で慎重に髪をくしけずってやるものの、全て綺麗に落とすのはどう考えても無理だった。
黒鋼の苦心を知ってか知らずか、ユゥイはゆっくりと大きな掌で撫でられる心地よさにうとうとと瞼が半分以上閉じかかっている。
濁らなくなったぬるま湯がだんだん冷めていくので、これ以上はやっても無駄だろう、と黒鋼は妥協することにした。
髪を洗うのに躍起になって風邪をひかせては元も子もない。仕方なく作業を終了させる。
落ちきれない僅かな墨がユゥイの髪を暗く澱んだものにしていた。月の光のように淡い金色が無残に薄汚れている。これは伸びてから切り揃えるしかない。
「勿体無い」と思いながらも黒鋼がとろんと眠たげな顔のユゥイの頭を乾いた手拭いでごしごしと拭いてやっていると、ファイがくいと黒鋼の袖を引いた。
「なんだ」
振り返ると、ファイは大きな瞳を輝かせて声を張り上げた。
「ファイも黒様に頭洗って欲しい!」
「は?」
確かにファイの頭はユゥイに比べて被害が軽かったので短時間で洗髪はすんだ。
「ユゥイみたいに黒様にゆーっくり撫で撫でされたいの」
洗う、といってもユゥイのように時間をかけて丁寧に髪を梳いてやったわけではない。どうやらユゥイの髪をじっくりと洗うのを見て、自分も同じようにしてもらいたいようだった。
面倒な…、と黒鋼は思わず胸中で毒づく。
しかしそんなものは期待に満ち満ちた瞳で見上げられると途端に掻き消えてしまう。
どうにもこの小さい生き物には弱いようだ。
「湯を沸かしてからな…」
「うん!」
うとうと、と船をこぐユゥイが風邪をひかないように髪を乾かしてやって、それからだ。
嬉しそうに何度も何度もファイが頷く。
本当に面倒な、と今度は苦笑交じりに呟いた。