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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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黒双子です。

100000HIT記念リクエスト企画です。お待たせいたしました。
モトさまリクエスト「黒双子、同じ店で働く三人」です。
素敵なリクエストを生かせずもうなんつーか申し訳ないやらです…。


拍手ありがとうございます。


では下からどうぞー。









「とりあえずコンクリ抱いて埠頭に沈むのと木箱に詰めてちょっと治安的に不安な海の外に出荷されるのと知り合いの合法なんだけどすっごく怪しいお医者様に渡されるの、どれがいい?」
にこやかな笑顔と爽やかな声色とは裏腹の物騒な言葉だ。
さすがに双子の弟からやり過ぎだと制止される。
「ファイ、とりあえずそれお客様だから」
お勘定を済ませて穏便に帰っていただこうね。
助けになっているのかいないのか、微妙に冷静な弟の言葉にそれもそうだと兄は思いなおす。
どういった膂力であるのか。襟首を締めて持ち上げている中年男性の体をぽい、と扉の前へと放り出すと怯える男から鮮やかな手際で料金を回収した。
一応だが正当な料金である。こっそりと迷惑料を上乗せしたがそれについて弟が何も言わないところをみると黙認ということなのだろう。
後ずさりながら逃げ出した男に軽やかに手を振りながら心の中で「もう来ないでね」と呟いた。


明るすぎない照明と華美ではないが細やかな装飾の施された調度。落ち着いた雰囲気とグランドピアノが調和している。
カウンターの内側の棚にはずらりと様々な種類の酒が並んでいる。洋酒、日本酒の区別はなくその種類と数の多さは圧巻だ。
ジャズバーのようだが、それよりも砕けた雰囲気である。この界隈ではそれなりに名の通った店だ。常連も多い。
手ごろな値段で軽く飲める上に、時折生ピアノの演奏も聞ける。一人、あるいは気心の知れた人間と時間を過ごすには悪くない店だ。

「で、また俺のいない時に揉め事起こしやがったのか」
「何言ってるのー。ユゥイは先天的にオレので後天的に黒様のものなんだよー。変なのに言い寄られてたら当然悪い虫は退治するよー」
「多分日本語の使い方間違ってるよ、ファイ」
苦い顔をする大柄な男の前でにこにこと全く悪びれないファイと少しだけ控えめに困ったように笑うユゥイ。
表情の違い以外で二人の容貌に差異は見られない。混じりけのないけぶるような金の髪に蒼い瞳。
精巧に作り上げられた一対のビスクドールのような双子だ。
ちょうど向かいに立つ男と真逆の色彩であるのも印象的である。
「黒様だってその場にいたら絶対そのお客さん殴り飛ばしてたと思うよー」
「どうかなあ。黒鋼だったら多分ファイを止めに入ってたと思うけど」
黒鋼、と呼ばれた男は歎息する。短い黒髪と鋭い赤の瞳。『黒鋼』という名がこれほどしっくりと馴染む人間は他にいないとさえ思える。
実のところ彼がこの店の持ち主である。本業は他にあって、まったくの道楽なのだが。
たまたま双子が「二人でお店をもてたらいいね」と話していたのをきっかけに祖父がやはり道楽で持っていたカフェの存在を思い出し改築した。
店の持ち主、とは言っても実際経営に口出しすることは少ない。元々のカフェの雰囲気を多分に残した内装を手がけたのも、実質的な切り盛りも全て双子の手による。
口出ししたのは酒の品揃えくらいのものだ。
店の雰囲気を考えれば、あまり日本酒や焼酎ばかりに力を入れるのもどうかと思ったが双子の反応も悪いものではなくむしろ乗り気だった。客もそのあたりの気取らなさを気に入って繰り返し来てくれている。
おかげで本人も酒の豊富さに自分の家に帰る回数よりも店を経由してファイとユゥイの元へ訪れる日数の方が多い。
予想以上に店も繁盛してありがたいことなのだが、一つだけ困ったことがある。
双子がとにかく口説かれやすいのだ。
客商売である。店の人間である以上客に接する時には多少のサービスや愛想は当たり前だが、双子の柔和な笑顔に何かを勘違いする人間がやたらと多い。
さすがに黒鋼がこの店の持ち主だと知っている人間は、あからさまに黒鋼の前で従業員を口説くような真似はしないが、黒鋼のいない時に口説かれることも少なくないらしい。
黒鋼も黙って椅子に腰掛けて飲んでいる限りは客と大差ない扱いだ。中には店の持ち主だということを気づかずに、黒鋼の目の前でファイやユゥイに迫って叩き出された客もいる。
そうまでしなくとも酔ってしつこく絡んでくる人間も多い。
自分相手のしつこい客は適当にあしらえても、双子の片割れにとなると我慢の限界値が極端に下がるのがファイだ。今夜もユゥイの手を握り締めて離そうとしない厄介な常連客をとうとう追い出した。
呆れ顔のユゥイだが、その実やることはファイと大差ない。
二日前にファイに絡む初老の客を泣くまで説教した。冷え切った視線で見つめ、淡々と、だが一つ一つ相手の言い分を論破していく姿にファイが「ユゥイ格好いいー」と呑気な感想をもらしていたりもしたが。

強面ながらも何故か黒鋼はそのあたりの調整が非常にうまい。
時に宥め、怒り、諌める。最終的に怒らせた時には双子の比ではない措置をとるとはいえ、見た目にそぐわぬ如才の無さに双子は素直に感嘆している。
そうでなければビジネスの、そしてごくごく私的なパートナーにも、選ぶことなど無かったであろうが。

渋面の黒鋼にさすがにやりすぎたかなあ、とファイが手近な椅子に腰掛けて上目遣いに見上げた。
「やっぱりさー、問題を起こすのを最小限に抑えようと思ったら言っておいたほうが言いと思うんだー」
「オレたちと黒鋼が付き合ってるってことを?」
ファイの言い分にユゥイが小首を傾げながら聞き返す。
無茶を言うな、とげんなりと机に突っ伏す黒鋼の心情を察してユゥイがぽんぽん、と黒鋼の頭を撫でる。
それに便乗してファイは黒鋼の服の端をくいくいと引っ張った。
「だって恋人が黒様だって分かったら口説かれないと思うんだー」
「…勘弁してくれ」
黒鋼にだって言い分はある。客観的に観れば、男同士はともかくも三人で付き合っているとかそれが双子だとか。我が身でなければ不道徳の極みだと蔑んでいることだろう。けれど、自分の気持ちにも相手のユゥイとファイの気持ちにも偽りなどないと知れるから。だから非難も覚悟の上で二人を選んだのだ。
かといってそれを広言出来るかどうかは別だ。承服しかねる。
第一、不道徳だとかそんな問題の他に、自分の男に金や店を提供させているという風評が立てば、双子の立場が悪いものになりはしないかという懸念がある。
それが分かっているのだろう。だってだってー、と拗ねるファイに苦笑しながらユゥイが黒鋼を気遣う。
「ファイ、我が儘言わないの。そりゃ中には困った人もいるけど、オレたちのやってる仕事にはそんな人たちにも対応するっていうのも含まれてるんだよ」
「うん…」
「黒鋼だって立場もあるし、オレたちのことも考えてあまり言いふらしたくないって思ってるんだから」
双子の弟に言われてなおも強く出られるファイではない。残念そうな顔をしながら、けれど納得して頷くと疲れた顔をした黒鋼に「無理言ってごめんね」と額をくっつけて謝った。
「いや」
黒鋼もそんな風にしおらしく出られるといつもの気勢では反応できない。らしくなく口ごもりながら少しだけ視線を逸らした。
つられてユゥイも微笑ましく唇に笑みをのせる。

次の一言でそんな甘やかな雰囲気も霧散したが。


「でも割と皆気づいてると思うんだけどな」

「は?」
「え?」
間抜けな声にユゥイが「知らなかったの?」とでも言いたげに首を傾げた。


黒鋼とファイ、ユゥイの双子が切り盛りする店はこの界隈ではそれなりに名が知られている。
ただし、どんな風に知られているか。そればかりは本人たちの知る由のないところでもある。


 

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