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では下からどうぞー。
遺産の管理は専門の人間に任せてある。とは言っても黒鋼の必要に応じてそれなりに自由に使えるため、暮らし向きに不自由はない。
かといってそれに甘えていられるような性分でも無いため、バイトもしている。定職についているわけでもそれで食べているわけでもないので、世間から見たらまだまだ甘いのだろうがやはり何もしないでいるよりも世界は格段に広がった。
まさかその世界で子どもを拾うだなんて思っても見なかったのだが。
ふに、と何か柔らかな重みが腹の辺りにある。目を開けた黒鋼のすぐ横には双子が蹲るようにして黒鋼の毛布を掴んでいた。重みはこれだったのだ。
昨夜は双子をベッドに寝かせたので、黒鋼はソファで寝ることにした。睡眠が去りきらない頭をどうにか動かし、時計に目をやるとまだ明け方の五時前だった。
台風は昨夜よりも強く、窓の外を叩きつけるような風雨が踊っている。
黒鋼が起きたのがわかった二人が毛布を更にギュッと握ってくる。
「どうした」
「まどが、…バン、って」
「がたがたって揺れて…」
顔を上げさせると二人とも頬がぐしゃぐしゃに涙で濡れていた。
真っ暗な部屋の中、あまりにも激しい雨と風に怖くなったのだろう。黒鋼を起こすことも出来ずにしがみついて震えていたらしい。
あくびを噛み殺しながら黒鋼はどうしたのもかと考えた。さすがにソファに三人もは寝られない。
くすん、と黒鋼にしがみついてくる双子を抱きかかえ、仕方なくベッドに移動することにした。
多少窮屈だがソファよりもマシだろう。
温もりの薄れ始めた布団をめくり上げ、とりあえずタオルで顔を拭かせた双子を放り込む。
不安そうに揺れる瞳が黒鋼を見つめていた。
「狭いけど我慢しろよ」
そう言って黒鋼は自らもベッドに潜り込む。とたんにぎゅうぎゅうと双子が体を寄せてきた。
小さな体を更に縮こまらせ、懸命に身を寄せる仕種は小さな猫か犬のようだ。布団の中で腕を伸ばし、背中を軽く叩いてやると僅かずつ体の緊張が解けていくのが分かった。
ゆっくりとゆっくりと呼吸が静かになり、やがて双子が完全に寝入ってしまった時には、黒鋼も奇妙な安堵と忘れていた眠気に包まれていた。