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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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僕だけのかみさまの続きです。
…進まない~。

9月のオンリー、申し込んできました。後でオフライン情報を訂正しときます。
最初の予定では相棒と一緒に行こうかとか相談してたんですが、どうにも予定が合わないため(主に夏コミ終了後のあっちのHPの残りが)仮名一人で参加します。
7、8月は仕事がどうにも忙しくて時間がとれるか謎ですが、出来るだけ本も出したいので当分休日の更新は滞ります。


拍手ありがとうございます。


では下からどうぞ~。


 








疲れた体とは裏腹に冷え切ってしまった頭は眠りを頑なに引き寄せようとしない。
まんじりともしないまま、気がつけば一夜が明けていた。

それでも、疲労の残る体をのろのろと起こして立ち上がる。今日も仕事に出ねばならないのだから。
それだけでどうにか黒鋼は動いていた。
熱めのシャワーを頭から浴びると、いくらかすっきりとした。
分けの分からない苛立ちを振り切るように、いつもよりも乱暴にタオルで体を擦る。
洗濯が済みたたまれているタオルが少ないのに気がつき、帰りにコインランドリーに寄らなければと思った。
ファイが部屋に出入りしていた頃には、いつもタオルから彼の使う洗剤の匂いがしていたけれど、今はもうそれもない。
不意に気がついてしまった小さな事実に、黒鋼は何故か打ちのめされていた。

 

黒鋼が働き詰めとは言っても、やはり多少の休みはある。
むしろ不景気の時勢だ。ある日急に仕事がキャンセルになり、ぽっかりと予定が無くなってしまう日だってあるのだから。
間が悪く互いに部屋にいる時間が重なれば、薄い壁越しに漏れ聞こえる生活音に否応無く気づかされる。
いくら避けているとは言っても、部屋が隣り合っているのだ。
ファイも黒鋼も用も無いのにテレビを垂れ流しにしておく癖は無かったから、その音は本当に微々たる物だった。
あれ以来、ファイが誰かと一緒に部屋にいる時に居合わせてしまったことはないけれど、隣の部屋の僅かな物音に敏感になってしまっている。
そんなことを意識してしまう自分がなんとも女々しくて、黒鋼は苛立ち混じりにドアを開けた。
がむしゃらに働いたおかげでどうにかそれなりの小金は貯まった。
無論叩き返したい額には程遠いが、急に予定の開いてしまった平日の早朝に、コンビニで酒を買うくらいの慎ましやかな贅沢は許されるだろう。
無造作にポケットに薄っぺらな財布を押し込んだ黒鋼の隣で、かちゃりと鍵の開く音がした。
「あ…」
ゴミを捨てに行くところだったのだろう。大き目のビニール袋を手に持ったファイが出てきた。
避けていた隣人と思いもよらず真正面から顔を合わせる羽目になり、黒鋼は咄嗟にどう反応していいものか分からなかった。
ファイも避けられていることを感じ取っていたのだろう。困惑したように視線が彷徨う。
数秒、間があった。
「…黒様、おはよー」
「…おう」
へにゃりと笑ったファイの顔は、記憶にあるものと似ている様でどこか似ていない気もする。同じ人物の顔なのに。
「なんか久しぶりだねー、こんなふうに顔合わせるのー」
ちゃんとご飯食べてる?と首を傾げるファイの表情は、いつも自分に「何か食べたいものある?」と聞いてきていた顔だった。
表情が見慣れたものになったことで、黒鋼は少しほっとする。
知らないうちに緊張で張り詰めていた二人の周りの空気が、少し柔らかなものに変わった気がした。
薄いコットン地のシャツを着たファイの姿は仕事から帰ったばかりのようには見えない。おそらくこちらも休みだったのか。
少し伸びた髪をゴムで留めているので、白い項が曝け出されている。
滑らかな細い首筋と鎖骨が目に飛び込んできた瞬間、黒鋼の脳裏に壁越しの声が木霊した。
そんなことを思い出す自分に嫌悪し、黒鋼はファイから視線を外す。
それでも、一度浮かんだ考えは消えてくれない。

この体を抱いた男がいる。
今、自分の目の前に立っている男は、ほんの数日前男に抱かれて、悦んでいたのだ。

ぐらりと眩暈のするような、感情の塊を飲み込むのに黒鋼は必死だった。
黒鋼のそんな態度をファイは却って心配した。
「大丈夫?疲れてるんでしょ、またバイト無茶してるんじゃないのー。
お金のことはいつだっていいから…あんまり無理しないでね」
ファイの細い指が黒鋼の頬を撫ぜる。一秒にも満たない触れあいだった。
なのに、そこが熱を持ったようにじんじんとする。
それが何故か苦しくて、黒鋼は声を振り絞った。表向きは平静を装って淡々としたように見せていたが。
「お前は?また馬鹿みたいなマネしてるんじゃねえだろうな」
「大丈夫だよー。あのね、黒様」
今までのファイの行動から鑑みるに、黒鋼の心配ももっともなのでさすがにバツの悪そうな顔をしてファイが笑った。
「オレね、新しい彼氏出来たよー」
「そうかよ」
とっくに知っていた。けれど、ファイの口から言葉として聞かされるのは別だ。
「会社員でね、なんていうか本当に普通の人。優しいよー」
「良かったじゃねえか」
それ以上、聞きたくもない。
けれど。
ファイがいつになく穏やかな顔で微笑うから、それを崩したくはないのだ。
さっさと会話を終らせたくてそれ以上言葉が継げない黒鋼に、ファイは財布を持っていることに気がつくと、買い物の邪魔をしたことを詫びた。
じゃあまたね、と手を振るファイに軽く手を振り返し背中を向ける。
とっとと酒を買って、早く飲みたい。
そうでもしないことには、自分の中から湧き上がる衝動を抑えられそうにも無かった。


体の奥からこみ上げてくる、このどす黒い感情が何なのか。それさえも分からない。


 

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