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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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危険信号の番外話です。
長編にはなりませんが、ぽつぽつと小話的にして二人がくっつけばいいな、と思ってます。
終着点が見つかっていません。

拍手ありがとうございます。


では下からどうぞー。








夜も更け始めた安酒場。乱闘騒ぎも珍しくないが、憲兵がきても面倒だ。
飲みかけていた安酒を一息に煽ると、黒鋼は騒ぎの元である取っ組み合いを続ける男二人の間に割って入った。
叩き上げの下士官や兵卒には、士官学校を出たばかりで実戦の伴わない上官を馬鹿にしている者も多い。けれど黒鋼はそれらを実力で黙らせて来た。徒手、武器の使用に関わらず、近接戦闘術でこの基地で彼の凌ぐ者はない。
自らも戦闘訓練を受けているはずの男二人をあっさりと引き離し、大人しくさせる。――要するに落としたのだ。
意識さえなければそこいらの潰れてしまった酔っ払いよりも面倒はない。ぐったりと力の抜けた体を、適当に周りで見ていた下士官に押し付けた。
飲みなおしたい気分だが、一度気分が削がれてしまうとどうにもいけない。
いっそ部屋に帰って一人酒でもしていた方がマシか、と思っていた時、横合いから遠慮がちに声をかけられた。
どうやら乱闘騒ぎを起こしていた二人の同僚らしく、黒鋼に頭を下げると「申し訳ありませんでした!」と謝罪される。
別段職務でここに顔を出しているわけでもなければ、黒鋼も自分直属の部下でもない人間のやることに首を突っ込みたいとは思わない。
特に責めるつもりもなく、恐縮しきりの下士官に尋ねた。
「いったい何を揉めてたんだ」
「は、はい!…あの、最初はアームレスリングだったんです。ただ…優勝したら、フローライト少佐のプライベートナンバーが手に入るって聞いて、二人が言い合いを始めて…」
頭が痛くなる気がした。
「…もういい」
下士官の言葉を遮ると黒鋼は自分の携帯端末を取り出し、そのプライベートナンバーも持ち主とやらを呼びつけた。

「お前は何面倒増やしてやがんだ。上官が揉め事の種作ってどうする!」
「あっれー、適当に後腐れのない人紹介してーって渡したのにー」
なんでこんなことになってるのかなあ、と全くの他人事で溜息をつく相手を、もはや上官とも思わずに黒鋼は頭を叩く。
すぱん、とやたらと小気味の良い音がした。
既に周囲も酒に酔うどころではないのだろう。関係ない者は我先にとこそこそ店から逃げ出している。
黒鋼はファイ本人にプライベートナンバーを確認させ、回収する。放置し続けても騒ぎの種になるだけだ。
圧倒的に男人口の多い軍隊ではファイのような外見はどうしてもその手の欲望の対象になりがちだ。本人もそれを自覚している上に、実際男相手の経験もある。黒鋼には全く分からないが、そういった嗜好の人間には覿面にその色香が効くらしい。
黒鋼が把握しているだけでも、ファイ狙いの諍いはそろそろ片手に余る。いい加減このあたりで釘を刺しておかなければ、と考えていた矢先でもあった。
大っぴらにはしていないが、有事の際のこの基地の指揮権を担う黒鋼として看過するわけにもいかない。
「だってねえ…、この基地には長くいることになりそうだし、ちょっと相手してくれる人でもつくろうかなーって思ってたとこだったんだー。ご無沙汰だったし」
最後の一言に、黒鋼はもう一発、今度は拳を叩き込んだ。痛い、と非難の声が上がるがどう考えても自業自得だ。ついでに付加えると、間違いなく探していた相手とやらは異性でなく同性なのだろう。
「軍規で同性間の性交渉厳禁、ってのは知ってるか」
「はーい、病気流行ると困るものねー。性病で部隊丸ごと隔離って笑えない」
「分かってんなら!こいつらを妙なことに巻き込むな」
噛み付きそうな勢いの黒鋼の様子にファイはあっさりと頷いた。ついでに何故か周囲の下士官たちも怯えて縮み上がった。
ファイよりも更に素直にこくこくと頷き、黒鋼が「もう行っていいぞ」と言うや否や、個室に逃げ込む者、目をそらして一番奥の席に逃げ込む者、勘定を多めに置いて釣りもとらずに逃げ出す者、色々だ。
つまんないー、とすぐ後ろでファイが小さく呟いたのは聞こえない振りをした。
ねえ、と肩を引っ張られればさすがに振り向かないわけにはいかない。
「ベッドの相手、とは言わないからー。今晩のお酒と、明日トレーニングルームに付き合って」
「それはこいつらで構わねえだろうが」
「迫ってきそうな人間相手に?密室空間でお酒?密室空間で殴る蹴る?そんな趣味ちょっないんだけどー。トレーニングルームは防音ばっちりだしー、不慮の同性間性交渉が起こっちゃったらどうするー?」
「てめ…」
「その点、黒様ならばっちり安全だねー」
「…断る」
「上官命令」
ね、とばっちりウインク付きで否応なしに止めを刺される。
周囲から、羨望とも憐憫ともつかぬ視線がばしばしと投げられていた。

黒鋼は思う。この夜の不運は、思えばこの店に入った時から始まっていたのだろうか、と。

 

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