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いや、お話は終ってるんですがなんか思いついたので…。
オフラインのことをちょっと色々やってるので休日でもあまり長文があげられません。
ごめんなさい…。
予定としては日本国再録にほのぼの小ネタを書き下ろし一つと(二つ書けたらいいなあ)、希色だけ独立して製本する予定です。
前者文庫サイズで¥300後者B6サイズで¥200くらいで考えています。
コピー本なのでまあちまちまと。
希色の書き下ろしエロパートが終らねえ…。
書けば書くほど「あれ、足りない気がするよ。もっと盛り込まないと!」な気持ちになってしまいます。自業自得…orz
拍手ありがとうございます!
では下からどうぞ。
遊郭から連れ帰った最初の夜明け、ファイは嬉しそうに笑って言った。
「もうこれで嘘の起請文なんて書かなくていいんだね」
何のことか意味の分からない黒鋼に、ファイはぎゅっとしがみ付いた。
辛くないわけではなかったけれどそれが自分の生きていく糧だったから、仕事だと自分自身に言い聞かせれば誰に抱かれるのも我慢が出来た。
本当に辛かったのは、行為そのものではない、とファイは呟いた。
見世にいた時のように艶やかな着物ではなく藍染の着物を纏うファイが今身を飾るために持つのは、自身の煌く金の髪と蒼の瞳だけだ。
熱に浮かされるように抱き合った情交の後のしどけない姿で、未だに帯を留めることさえせず薄い肩にかけただけの藍色の衣が白い肌に良く映えた。
「オレは人に体を売ってお金を得ていたんだから…そのお金で生きていたんだから。
どれだけ我慢しなきゃいけないことでも、それは仕方のないことだったんだよ」
黒鋼の裸の肩に猫のように頭を摺り寄せ、ファイは小さく「でも」と続ける。
囁くような声が震えていた。
「君を好きな気持ちのままで、他のお客さんに『好き』だって言うのは…嫌だった…!」
馴染み客からどれほど貢がせることが出来るのかが遊女たちの腕の見せ所でもある。
客の心を繋ぎとめておくためにまやかしの愛の言葉を囁くのも、時には偽の起請文すらこしらえて思いを誓う振りをするのも。身を売って生きていかざるを得ない遊女たちの常套手段だった。
けれど、それに心の全てが納得出来るかとなれば全く話は別だ。
「君のことが好きなのに、他の人が自分から離れていかないように嘘をついて…。そんな自分が嫌で、…汚いって思った…」
呻き声に近い声音に押し出されるように、瞳から涙が溢れ出る。
「辛くて…いつまでこんなのが続くのか、っ怖くて…」
無言でファイの細い体を抱きしめる黒鋼の腕に、抱き合う時よりも必死にファイの細い指が縋りつく。
もし、と黒鋼は考えた。
あのまま、自分がファイを連れ出そうともせずに今も遊郭で太夫と持て囃されるままにしておいたなら。
こんな風に辛かったと泣くことさえ出来ずに、笑っていたのだ。
二人が抱き合うのは、絢爛とした一夜の夢御殿ではない。粗末なただの家だった。
零れる涙の粒はとめどなかったけれど、あのまま美しい衣装に埋もれ笑わせておくよりもずっと良い。
そう思った黒鋼は黙って、嗚咽を漏らし続けるファイの痩身をきつく抱きしめなおした。