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ぶっちゃけてしまうと要は女体で永住設定です。
一応当ブログでは日本国永住に反応くださる方が多いのですが、女体駄目な方もいらっしゃると思いますので…。
パラレルとか女体に入れるのも少々赴きが違いますし。
ご家族ネタやりたかったし。
あ、投石は勘弁してくださいっ!
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ~。
障子越しに差し込む柔らかい光に彼はパチリと瞳を開けた。
寝起きは良い方なので、体を起こすとすぐに辺りを見回した。
昼寝の際には母親か侍女あるいは誰かが付いているのだが、そのどちらの姿も見当たらない。
瞼を小さな手で擦りながら縁側に出るが、やはり誰もおらず昼下がりの長閑な陽だまりだけがぽかぽかと体を包んだ。
領主である父親と巫女である母親。両親が多忙であり重責を担っていることを幼いながらも肌で感じ取っている彼はあまり我侭を言わない子どもだった。
それでも、やはり時折無性に寂しくなってしまう。
けれどそう口に出して言ったことはないが、不思議なことに父親も母親も彼がそう感じたときにはすぐ傍にいてくれるのだ。
そんな時は自分がとても特別扱いされているのだと、愛されているのだと感じられて本当に嬉しい。
本来ならば領主の子どもである彼には乳母がつけられるのが通例なのだが、両親は乳母をつけずに母親が手ずから彼を育てている。
ちゃんと自分で手をかけたいという母親の望みと、父親の両親もやはり同じようにして自分たちの子どもを育てたらしく、彼は妻の望みをすんなりと聞き入れた。
小さな手で昼寝のために寝かされていた自分の部屋と程近い両親の部屋の障子を開けるが、やはりそこにも人の姿は無い。
だがほんのりと残る気配に安心して、彼はそのまま板敷きの床のに敷かれた畳の上に転がった。
床に目線が近くなり、すぐ側の打乱箱に畳まれた母親の表着があることに気がつく。
いつもならそんなことはしないのに、今日は寝起きに誰の姿も見えず寂しかったのだろう。小さな手で表着を引っ張りだしてしまう。淡い青色の着物からは焚き染めた香の残り香がした。
母の祷場と同じ香りに少し安心してぎゅっと着物を握り締めて寝返りをうつと、着物の袖からことりと小さな音がした。
何の音だろうかと音のしたあたりに手を伸ばすと、小さな袋が手に触れる。
龍の刺繍が施された赤い袋は小さな彼の両の掌に乗るくらいの大きさだった。少し重みのあるそれはおそらく袂おとしとして着物に入れられていたものだろう。
さすがに開けてしまうのはいけないだろうと赤い袋を握り締めた彼の耳を、待ち望んだ人の声がうつ。
「どうしたの?起きてしまった?」
母親の声に彼は慌てて起き上がる。
寝床から勝手に抜け出して畳んであった着物を引っ張り出したことを怒られるだろうかとちらりと考えたが、母親は彼の傍に座ると優しく息子を抱き上げた。
慌てて握り締めていた小さな袋を差し出すと母親は微笑んでそれを受け取る。
怒られなかったことと母親に抱きしめられたことの二つにほっとすると、今度は小さな赤い袋の中身が気になった。
抱きしめられたままじっと母親の手の中にある袋を注視していると、息子の視線に気づいた母親が悪戯っぽく彼に囁いた。
「気になるの?」
そう言いながら橙色の紐を解き、彼に中身を見せてくれる。中に入っていたのは黒ずんだ鉄の欠片たち。
それを愛しげに見つめる母親の顔がいつになく優しくて彼はそっちの方が気になった。
息子の不思議そうな顔に気がついたのか、母親はいつものように彼に笑ってみせた。
「これはね、母上の宝物。父上との思い出なの」
もっと綺麗な真珠や水晶をいくつも持っているのに、白い掌の上に転がる金属の塊を母は本当に大事そうに赤い袋にしまう。
ちょっとだけそんな顔をさせる父親に妬いてしまうが、幸せそうな母親の顔に喜びを感じることの方がもっと大きくて、素直に彼も嬉しくなる。
「父上には内緒、ね」
母親との秘密ごとに小さな胸をワクワクさせて賢明に彼は頷いた。
そうして頭を優しく撫でられているうちにだんだんと瞼が重くなってくる。
きらきらと光をあびて輝く母親の髪の色が綺麗だなと思いながらも一度眼を閉じてしまうと、途端に忘れていたはずの睡魔が戻ってくる。
せっかく母親が傍にいてくれるのに、勿体無い、と思いながらも眠気には逆らえない。
だんだんと瞼が下がってしまう間隔が長くなっていく。
眠たそうにしながらも懸命に起きていようとする息子の姿を母親は微笑ましく見つめながら、その背を優しく叩いて眠りへと促す。
幼い我が子の顔を見つめる母親の顔は優しい。
「本当に…父上にそっくり」
幸せそうな母親の声に、最近父親から「瞳の色はあいつ譲りだな」と言われたことを思い出す。
母上の瞳は空よりも深い青なのに父上は不思議なことを言う、と思ったのだが、そんな記憶すら眠りの淵ではぼんやりと薄らいで。
眠りに誘われるまま、彼は金色の瞳をそっと閉ざした。