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ストーカー化学教師。それを止めない周囲。疲労する体育教師。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞー。
「普通に見れば普通にいい男のはずなのよね」
「わー、ありがとうございますー」
そう言いながらぺたぺたと化学教師の顔を触りまくっているのは、学園内最高権力者の理事長である。
これが本人の言うところの「普通の」男女であるならば、非常に美味しい状況かはたまた逆セクハラか、というシチュエーションであるのだが。
生憎と堀鐔学園高等部職員においては、理事長と化学教師の組み合わせはせいぜい非常識人の集いが良いところである。
主に被害を被っている体育教師と帰宅部男子あたりからはもっとバリエーションの富んだ呼び名が出てくるかもしれない。
そんな二人が向き合って、あまつさえ女性である理事長がむにむにぺたぺたと化学教師の顔をいじりまわしているのだ。
周囲は「ああ、また何か遊んでるなあ」くらいの認識しかない。
「どうしてかしらねえ。客観的に見ればいい男のはずなのに…」
ちっとも恋愛や欲情の対象じゃあないのよねえ。
惜しむような響きは一切なく、むしろしみじみと感じ入ったように言われて化学教師が曖昧に笑う。
「それは俺が黒たん先生一筋だからー」
「違うわね。貴方相手じゃ女友達以上の感覚がもてないからよ。女子生徒の群れと一晩同じ部屋に押し込めても、120パーセント間違いが起こる気がしないもの」
「うわあ」
そんな希望は一切ないが、男としての沽券はまるで皆無な言い分に、化学教師の顔がいよいよ困ったものになる。
「黒鋼先生と二人で化学準備室にいる時の方が、疾しいことでもしてるんじゃないかって気になるわ」
「そんな美味しい状況あったら活用しない手はないじゃないですかー」
当たり前だとそこだけはきっぱりと反論する化学教師は男らしいと言えなくもないかもしれない。
ふう、と理事長が諦めたようにやや重い溜息をついた。
「勿体ないっちゃ勿体ないけど、これでファイ先生が普通の男だったらつまらないでしょうね」
「いえ、オレは結構普通のつもりなんですけどー」
「普通の男はね、同性の同僚に一目惚れしてストーカー紛いに相手を監視したり無理やり恋人の座に収まったりなし崩しで周囲にそれを認知させないわ」
「でもそれはオレが黒様を好きだから仕方ないですよねー」
「まあ仕方ないわね。需要と供給がつりあった以上は」
「つりあってねえよ!」
職員室のど真ん中で繰り広げられる理事長と化学教師の会話に、体育教師の我慢の限界がとうとうやってきたらしい。
きゃー、と異口同音に呑気な悲鳴を上げて逃げ出した理事長と化学教師をもはや追う気力もなく、ぐったりと肩を落とした体育教師の忍耐は、本日はよく持ちこたえたと言うべきか。