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この話の馴れ初めも書かねば…。
ネタは尽きないのですが時間がありませんねえ。
求む精神と時の部屋。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
四月一日と百目鬼は見慣れた体育教師の車に思わず足を止めた。
最近職員宿舎から出て、広めの一軒家に移り住んだと専らの噂だ。
結婚だとか遺産相続だとか税金対策だとか。様々な噂が流れたが本人が語らぬ以上その真実の程はしれない。
運動部の生徒たちが乗せてもらうこともある大型の車には百目鬼も四月一日も世話になったことがあり、見間違えようもない。
見慣れた車があるということは、もしかしたら体育教師の新しい住居はこのあたりなのだろうか。
思わず足を止めてしまった二人の前で、助手席から降り立ちガレージから外へと出て来たのは、四月一日も百目鬼も良く見知った人物だった。
「「ファイ先生?」」
「あれ?百目鬼君と四月一日君?」
呼んだ方、呼ばれる方。ともにぎこちない動きになる。
ガレージの屋根で影っていた時には双方気がつかなかったが、何ヶ月か前に急に教職から退いた化学教師は教え子の名前を呼んで、何とも言えない照れくさそうな顔をした。
そのお腹は傍目にも分かるほど大きくなっている。
「おめでた、ですか?」
思わずそう聞いてしまう四月一日に、ファイは照れと嬉しさがない混ぜになった表情で頷いた。
幸せそうにはにかむファイの顔に四月一日と百目鬼の二人もなんだか面映ゆい気持ちになってしまう。
微妙な沈黙が流れた時、ファイの後ろから車の持ち主がひょっこりと顔を出した。
「どうした」
「黒様」
途端に晴れやかな笑顔を見せる元化学教師を見て、生徒二人は何となく事情を察してしまった。
車から降りるまで教え子がいることに気がついていなかったらしい体育教師がぎょっとしたように表情を固まらせる。
「あー…。…あのだなあ…」
慌てた体育教師が珍しく何か言い淀んで口元を抑えてしまうのを見て、それは確信へと変わる。
示し合わせたわけではないが、互いに視線を交した四月一日と百目鬼は二人に頭を下げた。
「「おめでとうございます」」
照れくさそうに視線をさ迷わせる教師たちからややあって、ありがとう、と返事が返った。