傾ける

永住設定小話です。

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では下からどうぞ。

日本国で人を罵倒する言葉の語彙というのは驚くほど少ない。
ついでに罵倒する言葉自体、もっと耳汚い言葉を知っているので何やら可愛らしく聞こえる。
そんなわけで実に興味深く、自分に向けられる悪口を拝聴していたファイだが、中には幾つか意味の分からない言葉もある。

傾城の相。

字引で意味を調べても合点がいかず、仕方なく身近な人に聞くことにした。


「『傾城』『傾国』とは一度振り返れば城を傾け、再び振り返れば国をも傾けると詠われた美人の故事ですわ。
美人に身代を傾ける者も多いことから遊女の別名にも使われております」
「はいー。それは字引にもあったんですけどー。
オレは別に美人でもないし、黒様一筋なので色々間違ってないかなぁってー」

月読はしとやかに口元を袖で覆って、耳障りの良い笑い声を溢した。

「仕方ありませんわ。なまじ城や国よりも頑丈なものを傾けてしまわれたのですもの」