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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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春望の続きです。
書きたかった一言へ、ようやく辿りつきました。
まだもうちょっとあるんですけどね…。

拍手ありがとうございますー。
リクエスト関連お待たせしまくっててすみません!ちょっとずつですが進めてます!

では下からどうぞ。








言葉の意味が上手く飲み込めず、奇妙な沈黙になった。
自分の願望を幻聴として聞いたのだろうか。
ファイは信じられずに、瞬きすら忘れて瞳を見開いた。
困ったように眉根を寄せて、女は苦笑ともつかない表情をしていた。
互いにこのような時に相応しい表情が思いつかない。
どう言葉を続ければいいのか、女も迷っているのだろう。視線がそわそわと落ち着かないでいる。
「二年…それくらいにはなりますでしょうか。私と息子が旦那様のもとへ身を寄せたのは」
とつとつと言葉につまりながら女が語りだす。それをファイは黙って聞いていた。


二年ほど前のことだという。白鷺城からそう遠くはない領土に群れをなす魔物が出没したのは。
その領土を護っていた巫女が亡くなってすぐのことだった。
巫女ほどでの魔力はないものの、かつては術者として城に仕えたこともある女は領土の兵たちとともに魔物の襲撃に抵抗した。
どうにか白鷺城からの援軍が来るまでは持ちこたえることが出来たものの、魔物に荒らされた土地は浄化されるまで人の住めるような状態ではなく、民も多くが瘴気や毒気にあてられ長くその地を離れざるを得なかった。
他の者たちと同じように一時は白鷺城の支城に引き取られていた女と息子だったが、身寄りも無くし寄る辺もない。これからの生計をたてる術もなく途方にくれていたのを、討伐隊として派遣されていた黒鋼が拾いあげたのだ。
飯炊き女として黒鋼の家に子どもと共に住み込むことを許され、そして年月が過ぎた。
一緒に暮らしたのはけして短くはない時間だ。周りからは夫婦のように見られることもあったし、そうではないと知った相手からは余計な世話を焼かれることもあった。
けれど黒鋼は雇い主としての分を越えた要求は一切しなかった。
主人が侍女に手を付けるのはけして珍しいことではない。黒鋼に拾われた当初に女もそれを覚悟したのだが、黒鋼が彼女に色めいたことを求めたことは一度も無かった。
時折遊里に行くことはあったので、まったくそういった欲望がないわけではないことも知っていた。
打ち解けた頃、不思議に思って聞いたことがある。
黒鋼は短く「待っている相手がいる」とだけ答えた。
お喋りな主ではないが、長く暮らすうちに時々待ち人のことを溢すことがあった。懐かしむような、慈しむような眼差しに女も確信した。
一誠をもって、彼は一人の人間だけを思い続けている。


ぽつりぽつりと言葉を途切れさせながら、女が話すのを、ファイは黙って聞いていた。
指先まで痺れたように動かない。緊張しているのだと自分でも気づいていたが、どうにも強張りが解けない。
今、自分が耳にしている言葉が信じられなくて、信じたくて。矛盾した思いがぐるぐると体の中を暴れ回る。
よほど呆けたように見つめ続けていたのだろう。女が目の前で少しだけ唇を綻ばせた。
「一度だけ…私の方から共寝を申し出たことがあります」
共寝、という言葉をファイは知らなかったが、今の話の流れでなんとなくその意味を察した。
傍にいなかった自分が責める道理はないと理解していても心から納得するかどうかとなれば別だった。ちり、と心が幽かにささくれ立つ。自分がこんなに嫉妬深いとは思いもしていなかった。
そんなファイにゆっくりと女は首を横に振って見せた。
「旦那様に対して情が無かったわけではありません。…けれど、打算でもありました」
他に頼る人もないままに子どもを抱えての生活は苦しい。いっそ周囲の人間がすすめるように本当の妻に、そうでなくとも主の手つきになってしまえば容易に追い出されることもないだろう。そう考えたのだと女は言った。
ぶっきらぼうで乱暴なようでいて、その実心根は優しい男だ。責任感も強い。一緒に暮らしてそれが分かった女にふとそんな考えが生じたとしてもおかしくはない話だった。
「でも、断られてしまいました」
「え?」
そのことを思い出したのか女が自嘲を滲ませて苦笑する。
「裏切れないから、と。…
『色里の女を抱いたからといって怒るような相手ではない。けれど、お前みたいな立場の女を弱みにつけこんで抱いたとなれば、あいつは俺を許さないだろう』そう言われました」
「…」
「貴方様を待ち続けている間、ずっと。旦那様のお心には貴方様がおられました」
他人など入り込む余地も無いほどに、と続けられた言葉にファイの糸はふつりと切れた。

眦から、熱いものが零れる。
はたり、と敷布に数滴沈んだその意味は、いつか流した涙とは大きく意味を違えていた。



 

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