有限の果て

日本国永住設定小話です。
たまには甘い話が書きたかったのです。

拍手ありがとうございます。

では下からどうぞ。

「あ、黒たん、初雪だー」

見上げればちらちらと曇天から白い欠片が舞い落ちていた。
つんと鼻の奥が痛むような冷気に冬をまざまざと感じる。
隣を見ると、ファイは空を仰ぎ見ていた。そこには憂いも陰りも存在しない。



永の旅路の果て、彼に与えることが出来たものが少しでもあるのかと、黒鋼は自答する。
答えはない。

けれど、傍らに在るファイの表情を見るたび、そんなものはいらないのだろうと思う。
それはきっと、一瞬で変えられるようなものではない。


天から雪が舞う。
いつかこの白が悲しみでなくなればいい。

どんな陰りや悲しみがあろうと、命有る限りその傍らにいるから。