朱に交われば

日本国永住小話です。

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では下からどうぞ。

細身に見えても魔術師とて男である。
それなりに腕っ節は強いし、女とは比べようのない体つきだ。
付け加えて、多少不幸慣れして思考が暗くなりがちではあるが、なにも虐げられて喜ぶような嗜好はない。
むしろ、時折ちらと垣間見えるのは、好ましい程度の負けん気の強さと誇り高さだ。
だから、穏やかそうな容貌とは裏腹に、売られた喧嘩はきっちりと清算することも知っている。

外見に惑わされ、相手の力量を見誤る阿呆にかける情けは毛頭ないのだ。


「またファイさんに絡む者がいたようですわね」
「知るか。自分でどうにかするだろ」
「まあ…。ですが、黒鋼、少しお考えなさいまし。
ただでさえ柔和なお顔が冷笑よりも冷ややかに微笑んで、ただの言い掛かりが否定しようのない十倍ものお返しになるのですわ。
再起不能…とまではいかぬでも、寝付いてしまう者もいるとか…。
不心得者に同情はいたしませんが、せめてもう少しばかり手心を加えてやってくださいませ、とお伝えくださいな。
貴方にも全く責のないことではないのですもの」
「はあ？」

「ファイさんの皮肉の言い様…、随分貴方に似てきましたこと」