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あと昨日チャットでお相手くださりありがとうございます。
では下からどうぞ~。
黒鋼が怪我をした。
忍なのだから戦闘は日常茶飯事である。傷を負わないことの方がおかしいのだが、双子に取っては初めて見るに等しい黒鋼の大怪我は衝撃だった。
当の怪我人よりもよほど顔色が悪く、元から白い肌から完全に血の気が引いてしまっていた。
白い止血帯の巻かれた腕を言葉も無く凝視する双子の思いは一つ。
自分たちが不幸を招き寄せたのだ、という自責ばかりだった。
黒鋼の傍にいてはいけない。
そばにいたら、不幸にしてしまう。
次はもっとひどい怪我をしてしまうかもしれない。
ずっとずっと一緒にいたかったけれど、そんなことになるくらいなら。
離れた方がいいのだと思った。
そう思って夜中に出ていこうと荷造りを始めたのだけれど。
荷物を包む風呂敷も、着替えも、巾着袋も、全部黒鋼がくれた物だったからそれだけで哀しくなってしまった。
黒鋼にもらったから、飴も髪紐もお手玉も、全部持って行きたい。
でも、一番はそんなものではないのだ。
とても哀しくなって、双子はべそべそ泣いてしまう。
荷造りのことさえ忘れてしまうくらい、とにかく哀しくて泣きじゃくった。
黒鋼が当然それに気がつかないはずもない。
がらりと襖が桟の上を滑る音にはっと気が付いたファイとユゥイは、一番離れたくない人の姿を見つけた。
荷物の言い訳をどうしようと考えてた二人に黒鋼の鋭い視線が刺さる。
「こんな夜中に散らかしてんな!」
泣き声を聞き付けた黒鋼に怒られたのはそれだけだった。
そのまま、泣いていた理由も、荷物の意味も問いただそうとはしないで、黒鋼は二人を布団に放り込む。
いつもの子ども用の布団ではなくて、最初にこの家に来た時と同じ黒鋼の布団だった。
鼻孔をくすぐる黒鋼の匂いに、離れようとした哀しい気持ちのまま、それでもやっぱり離れたくないのだと思って、ファイもユゥイも泣いた。
泣き続けている間中、黒鋼が背中を撫でいたから、嬉しくてわけのわからない、ぐちゃぐちゃな気持ちのまんま泣いた。
そしてそのまま気がつかないうちに寝てしまっていた。
泣きすぎて腫れぼったい目を擦りながら起きるファイとユゥイは、黒鋼の布団の中にすっぽりと収まっていて、黒鋼も同じ布団にいた。
黒鋼は何も言わなかったけれど、出ていかなくてもいいんだ、となんとなく分かって双子はまた泣いた。