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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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苦労人忍者の子育て話です。

拍手ありがとうございます。

では下からどうぞー。






知世姫が苦笑している。
黒鋼の足元からちらちらと黄色い頭が覗くものの、それ以上出てこようとはしない。
双子はひしと黒鋼の足にしがみついている。
以前知世の口から言われたことが余程尾を引いているらしい。今日などはまだ城に来ただけ良いほうだろう。
「こら、お前ら」
黒鋼が溜息をつきながら双子を前に出るように促した。
大きな手のひらに押され、おずおずと黒鋼の後ろから双子が姿を見せるが、相変わらず黒鋼の裾を掴んだまま俯いている。
つい先日攫われたばかりで、周囲への警戒と恐怖が拭えないのだろう。黒鋼からちっとも離れようとはしない。
双子を攫ったのは城へも出入りしていた寺院であり、強い魔力の双子を一山の稚児とすることで更なる信仰を集めようと画策していたようであった。
稚児と一口に言っても、女犯の禁じられた僧たちの床の相手する者から、寺の権威を内外に知らしめるために主の如く恭しく扱われる者などその役割はひとつには絞られない。
けれど、双子たち本人には知らされていないが攫った寺の特に幼い子どもが好みの僧正がいたとあって、それが大層天照帝の怒りをかった。
信仰の場に政の力を踏み込ませることを極力しない女帝であったが、今回ばかりは性根を叩きなおしてくれるとばかりに厳しい処遇を行うようだ。
怒りはするが、それは黒鋼の与り知るところではない。
それよりも問題なのが、双子の様子だ。
黒鋼から離れようとはしないのだ。
置いていかれるとまた攫われてしまうとでも思っているのか、とにかく傍にいたがった。
さすがに数日はそうやって甘やかしても良かったが、あまり長引くと任務もまともに出来ない。一番いいのはやはり城に預けておくことだろうと考えた。
知世に黒鋼以外の人間に預けても構わない、と言われてから城に来たがらなかったが、この際それは止むを得なかった。
言い聞かせると渋々ながらもここまではついてきたが、いざ知世姫本人を前にすると途端に双子は黒鋼の後ろに隠れてしまった。
無言でぎゅっとしがみ付かれて、黒鋼もさすがにそれ以上何も言えない。
知世が立ち上がり、黒鋼と双子の傍に歩み寄る。それだけで緊張してしまったのか、双子の体が強張った。小さな手を通してそれが黒鋼にもはっきりと伝わってくる。
俯いたままの双子に、知世は優しく声をかけた。
「怪我が無くて何よりでしたわ」
すぐさま双子が無言で首を横に振る。ぶんぶんと思いのほかの激しい否定に知世が軽く目を見開いた。
「黒様、…怪我」
「…ファイとユゥイのせい」
どうにか聞こえる程度の小さなくぐもった呟きが双子の口から零れた。
黒鋼が傷を負ったことを悔いているらしい。
双子の魔力の暴走により受けた傷は大きくはあったが、切り口が綺麗に裂けていたためかえって回復は早いものだった。
それでも大事な人を傷つけた自責は消えないようだ。
知世はそっと微笑むと双子の頭を撫でた。
「黒鋼は強い忍ですもの。大丈夫ですわ」
その言葉にようやく双子の頭が少し上がる。
「ほんとう?」
「ええ」
知世が断言するのに安堵したのか、双子の全身の緊張が少し解けたような気がした。
「黒鋼は強いから多少の怪我くらい何ともありませんわ。でも、家に帰った時にお二人がいないと吃驚しますから、今度からはこちらで黒鋼を待っていていただけますか?」
知世からの提案に双子の手がきゅっと黒鋼の裾を掴んだ力を強くする。
「…」
「…」
葛藤する双子を知世は辛抱強く待った。双子にもう一度信じてもらうには、それより他にはない。
じれったいほどの沈黙に黒鋼が痺れを切らしかけた時、双子が知世の顔をちらりと見た。
「…あのね、あのね」
「…黒たんと一緒にいてもいい?」
「ええ、勿論」
「じゃあ、ここにいてもいいよ」
「ユゥイもファイも、お利口にして黒様のこと待ってる」
「だからね、もうお余所に行きますか、って言わないでね」
「ええ」
「お約束ね」
「分かりましたわ」
知世が頷くのを確認して、それからようやく双子は安心したように知世の方を向いた。
照れたようにはにかむ姿に、知世も微笑み返す。
何より、双子の体から緊張が解けたことに一番安心したのは黒鋼だった。




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