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今年最後の休日でした。
病院に行ったら午後一時を回っても診断されなくてすっかり腰痛が悪化しました。
鼻水程度だった風邪も嫌な感じにひどくなっとります。
体調悪化させに行ったようなもんでした。
やらないといけないことは山積みだったのですが、このおかげで全部パーに。
もう嫌だー!
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞー。
自分がこんなにもちっぽけな存在だなんて、その時までは知る由も無かった。
人と獣人。種族の違う存在助け合い、支えあって共存する良い土地だった。魔物の群れに蹂躙されるまでは。
黒煙に淀んだ空。郷の人々の悲鳴と魔物の声が入り混じった不協和音。
魔物を食い止めるために戦った父。一人でも多くの里人を逃がそうと術を振るった母。
自分も最後まで戦うのだと言った彼に、父と母は微笑んだ。僅かに残っていた者も、一緒に微笑んでいた。
その笑顔があまりに優しかったから、分かってしまった。
母が彼を抱きしめたその袖さえ、いつしか血と泥に汚れていた。
優しく、強い声が耳を打ったのが、最後になった。
「この世の全ての幸が、貴方に降り注ぎますように」
駄目だ、と抗おうとした彼の体を淡い光が包んだ。転移の術だ。
薄れていく景色の中、父と母が寄り添うように、彼を見つめていた。
声にならない悲鳴を上げて、その遠ざかる故郷と両親に手を伸ばす。
嫌だ、駄目だ、と叫びたかったのに。それすらも出来ないまま、彼は飛ばされた。
暗い世界の中。四肢が引き攣れるような痛みを覚えて黒鋼は目を開けた。
ぼんやりと薄暗い場所だったが、自分が何か暖かいものに包まれているのが分かった。
ふかふかとしたそれはひどく心地が良い。
思わずもう一度眠りについてしまいそうな気になったが、それを押し留めたのは痛みと蘇った記憶だった。
警戒しながらゆっくりと体を起こして、そろそろとあたりを窺う。
見たこともないような造りの家に、思わず不安が忍び寄る。
手に何も持っていないのが妙に心細い。そういえば、最後に父が自分に手渡した刀が無い。
あればかりは失うわけにはいかない。
気がついた途端、矢も盾も堪らずに飛び出しそうになった。
痛む体を抑え寝台から降りようとした瞬間、木製の扉が開き、見たこともない人物が顔を覗かせた。
「あれー!?起きたんだぁ」
思わず黒鋼が動きを止めてしまったのは、その人の姿が信じられないような容貌だったからだ。
月か星が空から落ちたので無ければ、どうしてこんな色が地上に存在するのか。あるいは自分はもう死んでしまっているから、ここがあの世だから、そんな不思議が起こるのか。
金色の髪がふわふわと揺れている。長い前髪の間から覗く、二つの瞳は一番深い海と一番高い空を溶かしたような色だ。
警戒するよりも先に呆気にとられた黒鋼の前で、開かれた扉からひょこりと同じ顔が新たに現れた。
「起きたの?よかった、怪我は?まだ痛むでしょう?」
すぐに分かった。彼らは種族は異なるが、黒鋼と同じく獣人の一族だ。
敵なのか、そうでないのか。分かりかねて黒鋼はじっと不審な二人の人物を睨み付けた。