短い髪

永住特殊設定小話です。

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では下からどうぞ。

黒鋼が数日かけた領地視察から戻ると、妻の髪がやたらと短くなっていた。
旅の間と同じくらいだろうか。

妙に懐かしい感慨に耽る領主とは裏腹に、屋敷の侍女や兵は申し訳なさそうにうなだれる。
「どうした」
「売ったんだよー。思ってたよりも高く買ってくれたからこれで来年のお米や麦の種もみも買えるよー」

諏倭を平定してから後、ようやく復興の兆しを見せ始めたとはいえ、今年は天候の悪さもあり収穫は不調だった。
加えて良くない病も流行っている。
伸ばしていた髪をばっさりと切ったのは少しでもそのためになれば、と思ってのことだったようだ。
黒鋼は短くなった髪をそっと撫でた。

「悪い」
「ううん。オレの髪よりも諏倭の人やこの子の方が大事だもの」

ファイの腕の中、生まれたばかりの息子が小さく声をあげた。ファイも微笑む。
どんな美女よりもその姿が愛しくて、黒鋼は無言で二人を抱き締めた。