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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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100000HIT記念リクエスト企画です。
朝都様リクエスト「黒双子(女体)でどちらも子どもあり」です。
お待たせして申し訳ない。

黒双子ですが、女体なので苦手な方はご注意を。
お子さんはどっちが産もうがごちゃ混ぜで育てている気がします。

拍手ありがとうございます。


では下からどうぞー。







その日、諏倭には盛大な雷が落ちていた。
雷、といっても見渡す限りの晴天である。天候のことではない。

その雷の発生源は諏倭の領主の館の一室にいた。

「何で怒られているか分かる?」
「はい…」
「自分がどれだけ危ないことをしたのか分かってる?」
「はい…」
口数こそ少ないもの、きんと張り詰めた空気が肌を刺すようだった。
領主の館、奥まった私室の中で正座をして向かい合うのは長く伸ばした金色の髪の女性と六つか七つくらいの童子だ。
正座した幼子の小さな手がまだ細い脚の上でぎゅっと握り締められる。黒く短い髪の男の子の姿はこの地の領主をそのまま小さくしたようで、領主の近しい血縁者だということは想像に難くない。
一方の金色の髪の女はそもそもの造作からしてこの国の生まれではないことが分かる。
色白、というよりも根本的な質の違いである肌の白さも、どんな砂金でも染められない金色の髪も。何よりも人目を引くのは思わず息を飲んでしまいそうなくらい深い色をした蒼い瞳だ。
領主の息子がなぜ異国生まれの女に叱られているのか。
実に簡単な理由だ。
「ごめんなさい、…母上」
金の髪の女性は子どもの母親の一人であり――この諏倭の領主の妻でもある。
俯きがちに顔を曇らせる子どもの髪はしっとりと湿り気を含んでいた。
息子は庭の池に落ちた妹を助けようとしたのだ。
大人が傍についてるときでないと池に近づいてはいけない、と教えていたのだが遊びに夢中になるあまり妹は池のすぐ側で足を滑らせてしまったらしい。
小さい妹を池から引き上げたはいいものの、今度は自分が足を滑らせて池に落ちてしまった。
幸いなことに侍女たちがすぐに異変に気づき、子どもたちが皆事なきを得たが母親からしてみれば「それでよし」という問題ではない。
ずぶ濡れの体をさっぱりした着物に着替えた子どもたちに待っていたのは大変厳しいお説教だった。

瞳の端に思わず涙を滲ませる息子に母親は容赦しない。
いつもは優しい顔がとても直視できるようなものではなくなっている。
段々と頭が下がってきた息子の後ろで襖ががらがらと開けられた。
「ははうえ、怒っちゃだめー」
「あにうえ悪くないもんー」
まろぶように妹たちが走りこんでくる。
怒られている兄を庇うように二人が母親の膝に取り縋るが、ひょいとその体は簡単に背後から持ち上げられてしまった。
「はーい、駄目ですよ。兄上は今ユゥイがお説教中。その後で姫たちもお説教だからねー」
「ファイ、そのまま二人とも捕まえといてね」
「うん、まかせてー」
にこやかに妹たちを拘束しているのは、諏倭領主のもう一人の妻。その姿はやはり金色の髪に蒼い瞳という特徴的なものだ。
着ている着物の柄以外に妻二人の容姿に違いはない。
諏倭の領主の妻にして子どもたちの母親は二人いる。双子なのだ。


まだ子どもたちが産まれるずっと前の話になる。
北方の異国と日本国で両国の親交を深めるために縁談が持ち上がった。
しかしながら日本国の皇家には当時女児しかおらず、代わりに母親が皇家の血筋に近い諏倭の跡継ぎが異国の姫を娶ることになった。
諏倭の若君は国交のために、何より両親の奨める話ならば間違いはあるまい、と承諾した。
まさか二人も、それも双子が花嫁としてやって来るとは思わず、若君は婚礼直前の顔合わせで唖然とした。
見慣れない金色の髪とつぶらな蒼い瞳の双子だ。それこそ天から落ちてきた花のように人々の目に映る。
先代の領主は実に朗らかに「両手に花だな」と息子相手に宣った。
元々日本国は古来から招婿婚を基礎とする多夫多妻の慣習がある。魔物を倒すために武装した兵のような軍団が組まれてからは、特定の土地を基盤とする集団が多く生まれたために婿入り婚、嫁入り婚が多数を占めるようになった。
今となっては一夫一妻、あるいはそれに側室などを加えた一夫多妻の形式が多いが、それでも正式な妻となると複数は持たない。しかし双子のどちらかを妻に、もう一方を妾に、ということは出来かねる。
そんなわけで異例中の異例ではあるが、諏倭には正妻が二人いるという事態になった。
波乱含みの婚姻ではあったが幸いにして夫婦三人の仲は睦まじく、若君が隠居した父親から領主を継ぎ、やがて跡取りの息子と双子の娘にも恵まれた。
剣技においては先代領主を凌ぐと噂される諏倭領主と、白鷺城と並ぶと称される双子の妻の魔力のおかげで諏倭は安泰である。


「ははうえー、あにうえ怒っちゃだめー!」
「ははうえ離してー!」
「駄目ー」
わんわん、と大声で暴れる娘二人を押さえつけながらファイはにこにことユゥイと息子のやり取りを眺めている。
誰か一人が叱りつけている時には他の親は手出し口出しはしない、というのが領主の家での躾である。
全員が揃って叱ると子どもに逃げ場がなくなってしまうからだ。
子どももそれを分かっているから、自分が悪い時には叱責を素直に受け入れる。
だからと言って兄弟が叱られているのは放っておけないらしい。
息子本人は黙ってユゥイが叱りつけるのを聞いているが、娘たちは自分のせいで兄が怒られているのに耐えられなくなったようで、ファイの腕から逃れようと懸命に暴れている。
黙って正座している息子と暴れる娘二人と。半べそをかいているのが合わせて三人になった時、領地の見回りから帰って来た領主が姿を見せた。
子どもたちが溺れかけた、と聞いて着替えもせずにやって来たらしい。やや早足気味に響く歩調に、ファイとユゥイが少しだけ瞳を見交わして微笑んだ。
剣帯だけ外して現れた領主は一瞥して大体の状況を把握したらしい。
「おかえりなさい、黒様」
「おかえりなさい、黒鋼」
「おう」
妻たちに軽く答えると、黒鋼はユゥイに目配せをして息子の側にしゃがみ込んだ。
怒り役を入れ替わったユゥイが立ち上がってファイの手から暴れる娘を一人取り上げた。
涙目の息子がちらりと父親の顔を見上げる。
怒ってはいないがそれでも悪いことをした自覚のある子どもは真っ直ぐ父親の顔を見つめられない。
「池には近づくな、って言ってあったな」
「はい」
「妹を助けたのはえらかった。けど、危ないことをして母親に心配をかけさせたのは駄目だ。しちゃいけないって言われたことをした分には罰を与える。分かったな」
黒鋼がゆっくりと言い聞かせると、息子は小さくこくんと頷いた。
ぎゅっと瞳を瞑って身構えたその頭に、父親の拳骨が容赦なく落ちた。
幼子相手で本気ではないといえ、痛くないと罰にはならない。鈍い音に娘たちが身を竦める。
殴られた頭を抑えていた息子の瞳からぼろぼろと涙が落ちて、そのうち止まらなくなったものか盛大にしゃくり上げて泣き出した。
「ご、めんな、さい」
「もう危険なことはすんな」
父親にぎゅっとしがみ付いて嗚咽混じりに謝る息子が幾度も幾度も頷くのに、母親たちもほっと顔を見合わせる。
しがみ付く息子の頭をぽんぽん、とあやしながら黒鋼はそれぞれ母親に抱えられている娘にも向き直った。
「お前らも拳骨な。これに懲りたらちゃんと約束は守れ。危ないとこでは遊ぶな」
ごつん、ごつん、と息子にした分よりはいくらか軽い音がした。年下の分だけは力加減はするが、基本的に娘だからと容赦はしない。
娘二人は父親に怒られ、息子と同じように泣き出した。
子ども三人の泣き声が盛大に領主の館の一室に響く。
その頭上では母親たちの長閑な会話が広げられていた。
「あーあ、せっかくお風呂入れたのに泣いたらまた汗かいちゃう」
「黒様ー、着替えるついでにこの子達連れてお風呂入っちゃってよ」
「お前ら…帰ってきたばっかりの俺を労わる気はねえのか」
さすがに三人の子どもを纏めて面倒を見るのは骨が折れる。げんなりとした表情の黒鋼に、奥方二人は子どもたちに聞こえないようにそっと耳打ちした。

「「夜にね」」


余人には計り知れないが、三人で築き上げた家庭は間違いなく幸福なのである。


 

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