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すっかり保護者な黒猫さん。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
べちゃ!
びたん!
非常に痛そうな音を立てて地面に落っこちたのは白い毛玉、もとい仔猫二匹。
「ふえ…」
「痛いよぅ…」
べそべそと半泣きだけれども、痛みをぐっとこらえて泣くのを我慢する。
先日猫のくせに木の上から降りられないという醜態をさらした二匹は、立派な猫になるべくトレーニングをすることを決意した。
二匹をわりと溺愛しちゃってる飼い主さんは反対するかと思いきや、「腕白なのも良いことだね」の一言であっさりと二匹の主張を受け入れた。
…二匹の運動神経にいささか思うところがあったのかもしれない…。
そんなわけで早速庭の木によじ登っていたのだが、目の前をひらひらと踊るように飛んでいった蝶々にあっさりと集中を切らした二匹は、足元の確認もしないまま蝶々にじゃれ付き――お隣の敷地に見事に落っこちた。
「ファイ、だいじょうぶ?ほっぺ切ってるよ?」
「だいじょうぶ、ユゥイは?おてて擦りむいてるよ?」
「だいじょうぶ」
一生懸命お互いを気遣う姿はなんとも愛らしいが、二人はまだ気がついていない。
のそりとファイとユゥイの後ろに影がさした。
お互いばかり意識にあったせいで自分たちの周囲が暗く翳ったのに二匹が気づいたのはしばらくたってからだった。
「暗い?」
あれ?まだ夕方じゃないのに、と思い二匹が後ろをくるりと振り向く。
興味津々に犬が二匹を見つめていた。
自分たちの何倍もある動物の存在に二匹は固まり、たっぷり数秒の間をおいて…。
悲鳴を上げた。
アシュラさんちのお隣には幼稚園に通っているお嬢さんがいて、名前を譲刃ちゃんという。
犬鬼はその譲刃ちゃんの愛犬だった。
犬鬼は何も悪くない。むしろ奇妙な闖入者に出会いがしらに怖がられたり叫ばれたりと、どちらかというと被害者だろう。ここは犬鬼のおうちなのに。
けれど初めて見る大きな犬(といっても飽く迄双子の主観であって、犬鬼はせいぜい中型犬だ)にパニックに陥ったファイとユゥイがそんなことに思い至るはずもない。
完全に腰を抜かした二匹が、せめてもの威嚇ににゃあにゃあと叫んでいるのに困ってしまって、犬鬼は首を傾げた。
飼い主の譲刃ちゃんがいたら、呼んできて二匹を保護してもらうのだけれど、あいにくと彼女はまだ幼稚園から帰っていない。
どうしようかなあと考えた犬鬼の鼻が、その時助けになりそうな匂いを嗅ぎ取った。
ぐすぐすと泣きべそをかきながらファイはその背中に、ユゥイは首の後ろを咥えてぶら下げられた状態で黒猫に回収されていた。
「俺はお前らの保護者じゃねえぞ。ったく…」
そうブツブツ文句を言いながら、パトロール中だったボス猫は犬鬼の呼び声に応えて二匹をアシュラさんの家までつれて帰ってくれた。
「ごめんなさいー」
「ごめんなさいー」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながら二匹は謝る。
「俺よりもあとで犬鬼に謝っとけよ」
黒猫は町内に厄介な仲間が増えたものだと猫らしからぬため息をついた。