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増やしたらお知らせします。
下から七夕小話第二弾のログとなっております。
七夕話その四。
堀鐔設定。
七夕伝説と羽衣伝説がくっついてるヴァージョンもあるんだねー。
最近季節の行事の由来や説話を調べるのに熱中していた化学教師が面白そうに言う。
地上で水浴びをしていた天女の羽衣を隠した男が天女を娶るが、やがて隠していた羽衣を見つけた天女は天へと帰っていく。
羽衣伝説、と聞いた黒鋼もそう間を置かずにあらすじを思い出せるくらいメジャーなおとぎ話だ。ファイの言うところによれば羽衣伝説に類似、類型の話は世界各地に残っているらしく南米あたりにも同じような話が残っているらしい。
何故伝聞調なのかというと、聴きもしないのにファイが黒鋼に話して聞かせるからなのだが、下手に遮ったり無視すると後から無いこと無いこと吹聴される恐れがある。
故に適当な相槌を打つ体育教師だが、学習意欲旺盛な化学教師は相槌がどんなに適当でも反応があるので気にならないらしい。
図書館で借りた分厚い民話事典を読み進めながら黒鋼の背中にもたれかかっている。
「でもその場で初めて見た相手と結婚しようだなんて何考えてるんだろうねー。羽衣を盗んででも奥さんにしたいくらい美人だったのかな」
「まあ、天女だっつーから美人だったんじゃないか?」
「うん、でもねこの場合彦星も手緩いと思わない?窃盗までやらかしてゲットした奥さんなのに、あっさり見つかるようなところに羽衣隠して挙句に逃げられちゃうなんてー」
「おとぎ話にケチつけんな」
「何言ってるの!?本当に相手を物にしようと思ったら羽衣を燃やすなり売り払うなりして、証拠物件を完全に隠滅しなきゃ」
「鬼かお前は」
力いっぱい主張する化学教師の発言に、夏なのにうっすらと寒さを感じる体育教師だった。
堀鐔学園化学教師。
見初めた相手を確実にモノにするためには手段を選ばないらしい。
七夕話その五。
日本国永住設定。
七夕の由来を聞いたその日の夜。魔術師がぽつりとこぼした。
「一年会えないのはつらいね」
蚊帳の中に敷いた夏蒲団。
暑いのが駄目なくせに一人で眠るのを嫌がるファイは、今日も黒鋼の寝間着に顔を伏せて床についている。
夕方の続きか、と思い至った黒鋼はファイに好きなように話させる。
布団に入り眠りつくまでの間、他愛ないことを話すのをファイが好きなのを知っていたから。
「お仕事しなかった罰は仕方ないけど、会えるのが一年に一回はさびしいよ」
天帝の罰が厳しすぎるとこどものように頑是無いことを言うのが可愛らしい。
艶めいた空気とは程遠く、柔らかな髪をゆるゆると梳いてその感触を楽しんだ。
「本当は七日に一度しか会っちゃいけねえ、て話だったんだ。それを伝令の白いカラスだかカササギだかが間違えて、会えるのは七月七日だけって教えちまったんだと」
「何それ」
とんだとばっちりだと、ファイの顔が曇る。
「お前がしょげることじゃねえだろ」
「…うん」
「その罪滅ぼしで雨の夜はカササギが橋になるんだと。自分の失敗が原因だから、頭踏んづけられても文句言えねえんだろ」
それでも顰められたままの眉に黒鋼は苦笑する。
笹飾りもおとぎ話も、何もかも些細なことだ。
その些細なことをまるで幼子にでも言って聞かせるように、一つ一つ彼に教えている自分がおかしい。
それがちっとも面倒だとも思えないことも。
どれだけ絆されているんだか、と胸中で嘯いてわしゃわしゃと強く金色の髪をかき混ぜる。
なにするのー、と抗議の声が上がった相手の顔を上向かせた。
何時しか時々見せるようになったその無防備な顔が気に入っていた。曇らせた表情など見たいわけではない。
「一年も会えないと暇だからその間に策略練って、いつか二人で駆け落ちするかも知れねえな」
だからいつの間にか星が減ってても文句言うなよ、と。それこそ子ども騙しだろうと自分でも思ったのだけれど。
きょとんと見開いた瞳はやがて、そうだね、と嬉しそうに笑った。
七夕話その六。
現代設定。
「黒様、知ってるー?実は彦星ってとんでもないぐーたらで、無理矢理奥さんにされた織姫が子どもふたり残して家を出て行っちゃったって説」
「夢も希望もないな」
「おまけに、逃げる織姫を彦星も追いかけるんだけど、織姫は機織の道具を投げつけて彦星の妨害するんだよー」
「そこまで嫌がっててよく結婚生活が続いたな」
「子ども二人もいたって、努力なしじゃ結婚生活は破綻しちゃうもんなんだよぉ」
「…何が言いたいんだお前」
「黒様は働き者で、そこにはオレはぜーんぜん不満はないんだけど…もうちょっと構ってよ」