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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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僕だけのかみさま続きです。

せっかくのお休みなので色々としたい気持ちだけはあるのですが、まだ体調が本調子でないのとGW中の勤務疲れがあるので今日の更新はこれと拍手お返事だけで勘弁してくださいませ。

ごめんなさい~(;;)
素敵なネタもいただいているのに。

9月のイベントが5連休のど真ん中だという事実に昨日初めて気がつきました。


… 休 め な い か も、 これ。


……。
【知り合いの結婚式なので休みくれ】
って言ってみるよ!


では下からどうぞ。








視界の端をギラリと白く光る何かがかすめた。
危ない、と声を発するよりも早く体が動く。
咄嗟にファイを庇ったものの狭い階段で足場は悪く、嫌な浮遊感とともに次に襲い来る痛みを黒鋼は予想した。
今までファイと談笑していた馴染みの女性客の悲鳴と、あちこちに体をぶつける派手な音が鼓膜を刺激するのが煩わしかった。
数度、骨を直に打ちつけるような痛みを耐える。じんじんと背中が痺れたように熱く、ようやく自分が壁に背中をつけることが出来たのだと分かるのに少々時間を要した。
衝撃から護るように抱き込んだファイが息苦しそうにもぞもぞと動く。
「黒様!?」
未だに何事が起こったのか分からないファイが呆然と目を見開いて黒鋼を見上げる。
それに何も答えず、黒鋼は店の入り口から地上へと続く細い階段の上を睨んでいた。
その視線の先では、眼を血走らせ小さな刃物を振り回していた男が店の警備の人間に取り押さえられていた。


男の凶器の切っ先は、ファイへと向けられていたのだ。

もう一度、ファイのどこにも怪我が無いのを確かめるように、黒鋼は痩身を抱く腕に力を込めた。


「全治2週間ですって?骨が折れなかったのはたいしたものだけど、ひびが入ったほうが厄介よね」
オーナーが褒めているのか慰めなのか、どちらともつかない言葉を口にする。
あれからすぐに警察が呼ばれ、黒鋼は念のために病院へと連れていかれた。
予想外の医療費の支出に黒鋼は顔を顰めたが、勤務中の怪我なので店側から治療費が出ると聞いて渋々診察を承諾する。
無理な体勢で階段を落ちた衝撃で右足首の骨にひびが入っていたのだ。
幸いなことに大柄な黒鋼の全身に庇われていたおかげでファイは無傷ですんでいた。どちらも軽症ですんだことに心配していた店のスタッフたちも安堵する。
だが、黒鋼には全く喜ばしいことではない。
この怪我では仕事が出来なくなる。

最近は雇い先を見つけることが困難だったとは言え、少々きつい日雇いや短期のバイトであれば無いわけでも無かった。
今はファイの紹介でホストクラブの黒服をしているが、それだって足に怪我をしていながら出来ることではない。
怪我の痛みに耐えるの平気だが、賃金をもらえるような仕事が満足にこなせるかということになると、答えは否だ。
最低でも一週間は安静にしていないと後にひくだろう。目先のことに焦って無茶をして、結局怪我を長引かせてしまっては元も子もない。
そう冷静に考えてはいても、収入が必要なのは揺らぎようがない事実だった。人間は霞や雲を食って生きていけない。

急遽強制的な休養を言い渡された黒鋼は部屋に帰るなり、通帳の残額と治るまでの日数とを必死で計算する。
贅沢をするような生活ではなかったことと、ファイから紹介された仕事の給料が予想以上に良かったことで、どうにか当面の生活費はありそうだ。
だが、短期なりバイトなり、次の仕事がいつ入るか分からない。懸念要素は山積みだった。
そんな黒鋼の葛藤を知ってか知らないでか、自身も簡単な検査を受けたファイがあっさりと生活費の工面を申し出た。
「じゃあ治るまでオレがお世話するー」
即座に黒鋼はそれを拒む。
騒ぎが大きかったので、ファイも数日は休養を取るという名目で仕事を休むことになったようだ。
「冗談じゃねえ。お前の世話になるような筋合いは無いだろうが」
「あるよー。だって黒様オレを庇って怪我したんじゃないー」
それについては店のオーナーから治療費の他に見舞金が出ている。
生活を多少切り詰めればどうにか次のバイト先を見つけるまで食いつなぐことが出来るだろう。
だしかにファイを庇った結果だったが、それは自分の仕事の範疇であってその何もかもにファイが責任を感じる必要はないのだ。
何より、他人の稼いだ金を当て込んで生活するなどと、黒鋼の矜持が許さない。
きっぱりと余計な世話だと断る黒鋼の前で、ファイは傷ついた顔をする。
ファイだって分かっているのだ。余計な申し出だということくらい。それでも、ファイは黒鋼の生活を少しでも手助けしたいと思った。
たとえ不躾な申し出であっても、ファイにはそれをどうしてもしなければいけない理由があった。

「理由があったらいいの…?」
そう口を開いたファイに、黒鋼は胡乱な瞳を向ける。
それにファイはバツが悪そうに小さく笑った。
「あの男の人、オレの前の彼氏だよー。結婚するからオレのことは愛人にしておきたいって言った」
予想外の事実に、咄嗟には言葉の出てこない黒鋼だった。そんな黒鋼にファイは笑ってみせる。
ファイをそんな顔で笑わせてしまうなんて、嫌だと黒鋼は思った。
泣きたいのに泣けない。呼吸が出来なくなるような、こんな苦しい笑顔を黒鋼は知らない。
「バカみたいだよね…」
もしも。
あの男がファイに別れを告げた日に今日と同じだけの情熱でもって手放したくないとファイを選んでいたならば、きっと何もかもが違っていたはずなのだ。
けれど。

「あの人もオレも、馬鹿だよね。
君に、こんな怪我までさせちゃって…」
小さく呟いてファイがうずくまってしまうと、どうしようもない沈黙が狭い部屋を支配した。

金銭絡みだけならばファイの申し出などはね除けることを躊躇わない黒鋼だが、このままでは慰めることも、突っぱねることも出来ない。
うずくまるファイが泣いていないか、それだけが気になる。
「…飯だけ頼む」
憮然とした声だったが、ピクリとファイの肩が震えたのでちゃんと聞こえていたことが分かった。
後はずっと、二人とも無言だった。

 

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