[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
のばらシリーズです。
こう、自分の遅筆さが呪わしいですね。
もっと書きたいものは色々あるのに、費やす時間に対して物がキチンと出来上がらないのが悔しい。
書き上げるスピードの早い方というのを本当に尊敬します。
そして精進いたします。
体調がいまいち回復していないのか集中力がブツ切れです。
頭がぼやぼやしっぱなしです。
暑くなってきたのも良くないのでしょうか…。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ~。
『窓際の座席の右端の子良くね?可愛い』
『え、俺は反対側の子がいい。足細いし』
『俺はどっちかっつーと壁側のグループの二人の方が…』
剣道部の休日返上での他校との練習試合とは言え、集うのはお年頃な男子学生たち。
練習試合では敵味方に分かれた二校の部員たちも、試合が終れば互いに気のおけない顔なじみだ。
駅前のファミレスにたむろし各々の注文を終えれば、あとは食事をしながら他愛もない女子の品評が始まる。
同じ店内にいる女子グループやガラス越しに見える駅から通りを歩く通行人の姿をチェックしながら、ああだこうだとゴールのないやり取りを交わすのはいつものことだった。
そんな友人たちを横目に黒鋼はさっさと注文した皿を空にすることにする。
ドリンクバーを頼まないのは懐事情と元々甘ったるい飲み物を必要としないせいだ。
それに、ドリンクバーに支払った金額の元を取り戻そうと粘るほど長居するつもりはなかった。
「なあ、黒鋼は?どの子が可愛いって思うよ?」
「興味ねえ」
黒鋼の一蹴に、え~!!と他校の生徒からブーイングの声があがる。同じ学校の剣道部員は「まあ仕方ないか」と納得半分、苦笑半分の顔だ。
「今言ってた子とか可愛いじゃん!」
「知らねえよ、つーか飯食わせろ」
「ほら、あっちの席の子とか!」
ああ?と促されて仕方なしに黒鋼は一応目線を向けるが、全く興味が湧かなかったのは明らかで、一瞥しては興味がなさそうに料理を咀嚼する方に専念しだした。
「化粧でゴテゴテしてんのも痩せすぎてガリガリなのも注文した食事の仕方が汚ねえのも飯を残して甘ったるいもんばっか食ってる女も興味ねえよ」
「…いや、それは」
興味がないというよりは、はっきりと『嫌いなタイプ』だろう。
というよりも、この年代の男子学生の好ましいと思うタイプにしては微妙にずれているのではないだろうかと皆一様に思った。
だったらお前の好みは一体どんなのだ、と聞こうとした時、部員の一人が急に「あ!」と大きな声をあげる。
賑やかな店内でもそれは目立ち、大声を上げた生徒は仲間に小突かれながら慌てて首をすくめた。
けれど、その指でしっかりと店の窓ガラスの外をさすのも忘れない。
駅前に位置するファミレスの窓からは、駅の構内から出てくる人の波が良く見渡せる。そのために待ち合わせ場所としてもこのファミレスは人気で、平日でもなかなかの繁盛振りなのだ。
そのよく見渡すことの出来る駅から、ビスクドールが歩いてきた。
淡い金色の髪と白い肌は遠目からでも良く目立つ。
距離が遠いせいで瞳の色までは分からないが、控えめに評しても「美少女」だった。
明らかに纏う空気自体が異なる少女に唖然と言葉を失う者がいる中、黒鋼は一人平然と料理の最後の一口を口に放り込むと水で流し込んだ。
「悪い、先に出る」
未だにビスクドールに見入ったままの友人たちに声をかけると、律儀に自分の支払い分だけの硬貨を置いて黒鋼はさっさと荷物を担ぎ上げた。
止める間もあらば、さっさと背中を向けた黒鋼に、おお、とか、ああ、とか曖昧な返事を返して部員たちはビスクドールから視線を外せない。
ただ、黒鋼と同じ学校の生徒たちはにやにやと面白そうにそれを見ていたのだが。
十数秒後。
件のビスクドールが嬉しそうに黒鋼の腕に抱きつくのを見て、他校の剣道部員は今度こそ店中の注目を集める大絶叫をあげたのだった。