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幕僚機関であろうファイと実戦部隊(特務っぽいと思う)の黒鋼の接点ってなんだろう、と考えてはいけません。妄想フィルターでごー、ですよ。
軍服ってストイックで萌えますが、野外作業のつなぎもすっごく好きです。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞー。
「疲れたー」
いくら本気でやりあったとしても、あくまでも模擬訓練であり、実戦ではない。
けれど、黒鋼を相手にした場合、実戦と呼んでも差し支えないくらいに全力でかからねばならない。
訓練とはいえ一対一で接近戦をしあったファイは全身の疲労とともにばたりと床に横たわった。拭っても拭っても吹き出る汗さえ今は気にならない。
「何が疲れた、だ。デスクワークだけの優男かと思ったら、とんでもねえじゃじゃ馬じゃねえか」
「超絶規格外に言われたくないでーす」
かれこれ数十分、ファイと組み合っていた黒鋼も倒れこそしないものの、その呼吸は上がり汗も止め処ない。
ぐい、と額から滴る汗をタオルで乱暴に拭うと黒鋼は用意してあったボトルから水分を補給する。
「オレにもちょーだい」
寝転んだまま水を要求するファイに、ボトルの残りを投げ渡すとファイは片手でそれを受け取った。
器用なものだと黒鋼は妙な感心をする。
実に不可解な男だ。
人当たりの良いように見えて、その実彼ほど隠し事の多い人間を黒鋼は知らない。
彼の知り合いの少女などは「無闇に暴きたてるものではありませんわ」と笑っていた。黒鋼もそれには同意するが、この元スパイの生い立ちと抱える事情と、そして未だに軍部に残る理由。
どれ一つとっても用意に飲み込めるものではない。
国家間の複雑かつ厄介なしがらみを懇々と黒鋼に説明した少女の白い面が一瞬脳裏を過ったが、黒鋼にはさして興味もない。所詮は上層部の思惑と駆け引きで成り立つものであり、一介の軍人の出る幕ではない。
そう切り捨てた黒鋼を、出来の悪い息子を見るような苦笑でもって見つめた少女は「まあよろしいでしょう。今は」とやたらに意味深な言葉を残してくれたが。
「黒様ー?」
眉間に皺を寄せる黒鋼気が付いたものか。ファイが名を呼んだ。
「なんだ」
「なんとなく呼んだだけー」
へらりと笑う顔を随分と見慣れた気もするが、不思議と以前とはその表情が違っているように見える。他愛のない、愛想笑いだとしても裏のないそれだ。意味のない声に苛立ちを感じないのは、そのせいだろう。
そう判断して黒鋼はふん、と鼻を鳴らした。
ファイの笑みが僅かに深いものになる。