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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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堀鐔小話です。
保健室、またの名を魔窟。(黒様の被害的な意味合いで)

年が明けてから初めて本格的にパソコンをいじり倒している気がします。

拍手ありがとうございます。


では下からどうぞ。










外見だけは実に優しげな保険医だが、その実かなり曲者である。
奇人変人揃いの学園においては、外面の物腰の柔らかさ、それ一つで真っ当な部類に部類わけされる彼のその裏側に気づくことの出来る人間は少ない。
その数少ない人間のうちの一人が化学教師だった。ちなみに彼とセット売り商品宜しくつるんでいる体育教師はよほど嗅覚が鋭敏なのか、初見で保険医を「胡散臭い」と評した。正解である。

自身の巧妙に隠した裏側を知りながら、平気な顔をして保険医の城である保健室にお茶を飲みに来るファイの胆力には賞賛を送りたい、と星史郎は思っている。
専らファイが保健室にやってくる目的の殆どは、つれない恋人を積極的にさせようと不穏な企みに計略を巡らせているときなのだが。
臆面もなく「怪しい薬よろしく」と実に清々しく微笑む化学教師の姿に、本当にほんの少しばかりではあるが体育教師に対する憐憫じみた気持ちが湧いてこないでもない。
そんなわけで本日の昼下がりも消毒薬の匂いがかすかに漂う保健室で、化学教師の持参したクッキーをお茶請けに、二人は顔を突き合わせてコーヒーを飲んでいた。
「内臓機能が丈夫過ぎるのも問題ですよねえ…。人よりも成分分解が早いのかなあ」
ファイは困ったように呟く。不穏な発言だが、本人は至って真面目だ。
「飲ませすぎると耐性がつきますよ。元々こういった不純物には敏感なようですし」
そう言って保険医がにこやかに指し示す先には錠剤のシートが無造作においてある。どこにでもある普通の錠剤に見えた。薬の名前もそれを開発したとおぼしき企業名も一切印刷されていない点を除けば。

今度こそ効きます様に、と神妙に手を合わせる化学教師の姿がいつになく真摯で、保険医にふと悪戯心が湧いた。
「妬けますね」
言葉の意味が飲み込めなかったファイがぱちりと瞳を瞬かせる。椅子から体を浮かせて少し身を乗り出せば、その瞳に映った自分の姿が蒼色に染まっているのが分かるほど顔が近づいた。
「報われないような恋を、…恋人を止めてしまいたいとは思いませんか?」
「え?」
蒼い瞳に映る姿が揺れた。ファイが目を眇めたのだ。
そこから感情を読み取ることは難しい。
「恋を止めて…?」
ちらりと投げかけられる視線を受け止めて、微笑んで見せた。
「もっとちゃんと貴方を愛してくれる人と付き合う、なんて選択もありますよ」
「…黒様じゃない人と?」
「ええ、例えば僕、とか」
僕は貴方のことを気に入っていますから。

にこり、と微笑むその先で、青い瞳が揺れ、不意に逸らされた。
ファイの表情が見えなくなり、星史郎はその白い頬にそっと指を伸ばす。
陶器のように白くすべらかな頬に触れる直前だった。


「嘘つきですね」

指は、結局ファイには触れられなかった。
むくりと顔を上げたファイはいつもの悪戯っこのようににんまりとした笑みを浮かべている。
「どっちかって言うと星史郎先生のお気に入りは黒たんの方じゃないですかー」
「ばれましたか」
あっさりと毒気は霧散して、星史郎もそれ以上遊ぶ気はなくなる。
「あんまりオレで遊ばないでくださいねー、黒様が嫉妬してくれるからいいけどー」
「それは失礼いたしました」
暇つぶしのゲームにもならないが数分の時間つぶしは出来た。言葉遊びのようなやり取りをして、暗に終了だ、と互いに確認する。
折りしも、授業の終わりを知らせるチャイムが校内に鳴り響いた。
「コーヒーご馳走様でしたー」
ぺこりと頭を下げてファイは椅子から立ち上がる。ぺたぺたとスリッパの間の抜けた音が床を打った。
唐突にファイが思い出したように振り替える。
「それとさっきの話なんですけど」
反応の遅れた星史郎の目の前でファイは実に艶やかに微笑んで見せた。

「オレが欲情するのは黒様だけなんでダメですよ」

咄嗟に言葉の出ない保険医を小気味良く思ったのか、ファイは笑みを深くする。
「それに好きな人以外の人間に興味なんてないでしょう?星史郎先生も」
お互い様じゃないですか、と苦笑する保険医に背中を向けて化学教師はさっさと出て行ってしまう。手にはしっかりと得体の知れない薬を握り締めて。


興味があるのは、たった一人。

お互い様だ。






 

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