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堀鐔小話です。
某児童文学、少年魔法使いのシリーズ最新刊にして最終巻を購入しました。
今夜は一人で祭りです。
職場に新人さんが入ったことで来月から大きく勤務体制が変わりそうです。
今まで全日勤務だったのが、全日、遅出、早出というシフトになるらしいので、通院(例の腰痛)に少しは楽かな、と思っています。
…暇そうな月にイベントにいけるようになったらいいなー。
小話は下からどうぞ。
その日、通勤してきた体育教師の頬には赤く二筋くっきりと並んだひっかき傷。
痴話喧嘩かと盛り上がった生徒・教職員に体育教師は黙殺で答え、化学教師が慌てて「オレの誤解だったんです~」と弁解していた。
「ごめんねー」
見るからに痛そうな爪痕をおそるおそるファイは撫でる。
触れられると、ちり、と痛みが走るのだが黒鋼はファイのしたいようにさせた。
昨夜、黒鋼が浮気していると勘違いしたファイが打った頬は、平手の後にかすめた爪がその表皮を裂いていた。
無論やましいことなど無く、飲食店で偶然教え子の姉と同席しただけなのだがそれをどう伝え聞いたのやら。
半ば以上本気で別れることさえ覚悟していたファイは、ようやく誤解だと分かった時はホッとしたあまりにその場で泣き出した。
珍しさと泣かせてしまった後悔とで、一晩中ファイをなだめるのに終始した黒鋼は当然自分の傷口に頓着するはずもなく、今朝になってようやく自分が怪我をしたことに思い到る。
「怒ってる?」
「怒ってねえよ」
「じゃあ呆れてる?」
「もう少し信用しろ、とは思ってるな」
生徒の家族相手に全部妬かれては身がもたない。
けれど。
「お前には妬いたり怒る権利があるだろう」
「…でも、重くない?」
「そういう束縛も込みで付き合ってんだろうが」
「…そっかあ」
そうか、と何度も何度も繰り返す。徐々に瞳に安心したような色が広がる。
いつだって気ままに自分本位に擦り寄るポーズを見せるくせに、いざとなると甘えたり深い部分に踏み込むことに怯えるファイを黒鋼は根気強く待った。
その蒼が落ち着いたのを見とめ、宥めるようにさらりと淡い金色の髪を梳く。
大きな掌に甘やかされているのが分かったファイがごめんね、ともう一度小さく囁いて、傷口に唇を寄せ、ちろりと舌で舐めた。