お昼時の選択

四月馬鹿シリーズ小話です。

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では下からどうぞ。

「ん！」
笑顔で息子が引きずってくるのはチャイルドシートだ。
最初は乗せる度に怖がって泣いていたのに。これに乗る＝お出かけ、という図式が成立してからはむしろ積極的に自分から用意してくる。
可愛いことこの上ないのだが。

「今日はお買い物もないからそれは使わないよー」
「や！」
ぷるぷると頭を振って拒否される。
お出かけの気分らしい。
わがままはいけないが、黒鋼そっくりの顔を見るとつい甘やかしたくなってしまう。

「今日は駄目だけど、お父さんがお休みの日にドライブに行こうかー。お弁当も持って」
だから今日は我慢して？
ファイがそう言うと、息子はしばらくチャイルドシートと母親の顔を見比べた。
迷っているのをもう一押し。
「それに今からお昼ご飯作らなきゃー。おうどん食べたいー？お素麺？」
「うのん！」
あっさりと頭の中は食欲に切り替わったらしい。
おうどん食べようねえ、と言いながらファイは息子の気が変わってしまわないうちにそっとチャイルドシートを片付けた。