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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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明日は早出です。
上司が自分がする、といった仕事を結局こっちに回してくるから。最近はこんなのばっかり。
パートさんと二人で「お前がやれ」とぼそぼそ呟きながらお仕事してきます。

今月の新刊が既に発売されていたのを友人からのメールで知りました。
寝る前に「屍/鬼」だけ読みたいです。

日本国小話は下からどうぞ。









日本国随一の忍の渋面を前にして平気な人物がいるとするのならば、それは途方もなく豪胆な人間であろうというのが専らの評である。

その途方もなく豪胆な人物その一にして彼の主でもある姫巫女は、常と変わらない笑みで黒鋼とその連れの入室を促した。傍らには豪胆な人物その二、姫巫女の実姉でありこの日本国の至尊の君天照が座している。
それぞれに政治と祭祀を司る統治者としての責任感や連帯感もあろうが、基本的にこの姉妹の仲は良い。その仲の良さが傍目には判りづらいことが多いので、周囲はそれに振り回されることも多々あるのだが。それもまた彼女たちの間のみで理解することの出来る気の許し方なのだということだろう。

ただし、振り回される側にも反論はあるのだと黒鋼は思った。
黒鋼の後ろからその三が顔を出す。金色の髪に白い肌。日本国に人間にはいない、存在する色彩の全てが淡い彼の姿がこの城に馴染んでからもうしばらくになる。
「帝、知世姫。お呼びにつき御前に参上いたしました」
かしこまって礼をとる仕種は天性の優雅さを感じさせ、けしてその出自が怪しいものでないことを動きの端々から窺わせる。
今日は一体何匹の猫をかぶるつもりやら、と黒鋼の眉間の皺が知らず深くなった。

黒鋼の心中を知ってか知らずか、知っていてあっさりと無視しただけなのか、知世は鷹揚に笑った。
「お忙しいところお呼び立てしたのは私ですわ。どうか楽になさってください」
「ではお言葉に甘えて失礼いたします」
出来れば口調も堅苦しいものではなく、と促す姫巫女にファイも微笑み返して膝をつく。

「今日は天照様と知世姫にお土産を持ってきたんですよー」
それを聞いた二人が口々にそれは楽しみだと言うのはあながちお世辞ばかりではないらしい。
手にしていた薄紅色の風呂敷から取り出され高杯に形良く盛られていくのは、朝からファイが台所で作っていた菓子だと知れる。
甘いものを嫌いだという女性は少ないのだろう、旅を共にしていたあの幼い姫もファイの作る菓子を心底幸せそうな顔で頬張っていたのを思い出す。

「今日はどんなものを?」
戦場に武人として出ることをも厭わない帝もそれは同じようで嬉々として興味深げにファイの手元を覗き込んでいる。
「こっちが米粉を蜂蜜で練って油で揚げたもので、これが小麦粉を練った中に桃の砂糖漬けを詰めて焼いたものです」
本来、蜂蜜や精製された上質な砂糖といった高価な上に滋養があるとされる食材は本来簡単に手に入るものではない。知世や天照であるから当然のように各地から献上されたそれを口にすることが出来るのだが、普通は手に入れることすら困難なのだ。
黒鋼とファイの立場からでも容易く手に入れることが適うものではないその食材を、目の前の姫君二人はファイに惜しみなく下賜する。花見か何かの折にファイが手土産として持参した菓子が大層お気に召したらしい。

そして、黒鋼が感じる嫌な予感。予想する、というよりも実体験に基づく予測として問題はここからだ。
「黒様」
まぶした粉砂糖で指先を汚したファイがその手に抓んだ菓子を黒鋼の顔の前に持ってくる。
「はい、毒見」
にっこりと一見邪気のないように差し出された揚げ菓子は記憶によれば蜂蜜がふんだんに使われていたはずだ。
眉間の皺が増えたのが自分でもはっきりと分かった。
「…お前がすりゃいいだろうが」
「何言ってるのぉ?もしオレが解毒剤でも先に使ってたら意味ないでしょう。毒に対策を講じてあるかもしれない作った本人に毒見させるなんて、ある意味大馬鹿者のすることだよ」
口が減らない、とはこういうことを言う。言うと十倍になって返ってくるので黒鋼が賢明にも口にすることはなかったが。
「黒鋼」
天照が殊更に大仰に名を呼ばわる。もっともその瞳が笑っているのを隠そうともしていない。
「主を身辺を守るのが忍としての務めでしょう」

『まずは貴方がお食べなさい』
実に上機嫌に命ずる帝に、それを面白そうに見守る妹姫。口を開けろとばかりに差し出した手を下ろさない魔術師。

内心で盛大な舌打ちをしながらも拒否の出来ない状態に黒鋼がファイの手元に口を寄せた。
口の中に蜂蜜の甘味がほろりと広がる。

「甘え…」

苦々しげにそう呟く黒鋼を他所に姫君たちは「大丈夫のようですわね」と言ってさっさと茶の準備をしている。
「お手伝いしまーす」
作った本人までもが黒鋼が一口食べたことを見届けるとあっさりと引き下がる。三人とも端から毒見をさせるつもりなど欠片もないのだ。
少しばかり苛立たしいのだががなりたてる気にもならない。こうでもしないとファイの作ったものを一番に口にはしないであろう事を見透かされているのだろうなと思った。

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