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明後日以降の勤務日程が覆されるかもしれない恐怖。
半月近い連続勤務も嫌ですが、こんなぎりぎりのスケジュールも嫌です(涙)
黒鋼の真名はやっぱり字面的に良いですね。呼びづらそうだけれど。
ずっとこの真名のネタが書きたかったんですが難しい…。
知世姫とファイ。
「守護を」
そう言って、すっ、とのばされた姫君の小さな手。桜貝のような淡い色の爪が印象的だった。
「今は分からなくとも良いのです」
これは護り。
「あなたにはきっと何よりも」
ただ稚気めいた指遊びのように掌を辿る巫女姫の白い指には、魔力の欠片すら感じられない。
ファイにとっては馴染みのない象形は、桜の舞散る世界で黒鋼が綴っていた文字を思いおこさせる。
力有るもの、猛きもの。絶対なる力。
そして。
その長、威力の象徴たるもの。
『 』
一筋、一筋、切なる願いを込めて、姫君が掌に残した軌跡はたった二文字分。
ファイはその意味など知らない。
知世も知らせるつもりもなかった。
いずれは、解る時がくるのならば。その時、それを告げるべきである人間は他にいる。たとえ、未来永劫、知ることがなくとも、大事なのは刻まれたものとその事実。
その名を預ける意味も託された意味も、告げる間でもなく二人は分かち合っていた。
(くろがね)
(くろがね――。
“これ”は“君”だ――)
はらはらとこぼれる涙の意味は分からぬままに、ただ熱を帯びた掌を握り締めた。
苛烈で優しい赤を思う。
愛しきもの。
「そのいのちを」
慈しみ、生きよと。
「そのめいを」
違うことなく護れ、と。
遠くない過去が自分に強いた未来への指針とは裏腹の温かさは、彼と同じ温度をしていた。