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長々とお待たせいたしました。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
小さな鳥に導かれるまま黒鋼は走った。
ひどい目にあわされることはないだろうが、双子がどんな思いでいるのか。想像して、胸が痛むよりも先に舌打ちする。
黒様、と幼い声で自分を呼ぶ。小さな手を目一杯差し伸べる。そんな姿を思い出す。
自分がとうに切り捨ててきたと思ったものを、容赦なく叩き起こしていったその体は、柔らかいばかりでひどく頼りない。
生まれ落ちた場所から捨てられた子どもが、ようやく求めることを覚え始めたのだ。
一心に黒鋼は走り続けた。
やがて見えてきたのは寺の門だ。詣でる人間の多い表ではない。中の人間が出入りするために使うごく小さな門。
人目のないことを確認してするりと黒鋼はそこから中へと入る。
まだそこかしこに人の気配がしていた。見つかり騒がれでもすれば厄介なことだ。手頃な木に飛び乗り、身を潜めた。小さな鳥も心得たように黒鋼の肩にちょこんと収まる。
本堂や伽藍、宿坊などいくつも建物が並んでいる。その配置を頭の中に思い描き、黒鋼はどうやって探索するか、その経路を探り始めた。
けれど、それは徒労に終る。小さな鳥を促そうとしたその時だった。
予期せぬ轟音が辺りに響く。
火薬に火がついたように、けたたましい音を立てて寺の一画が、弾け飛んだ。
「!」
そこかしこで悲鳴があがり、僧侶や雑色が転がるように走り出る。
身を隠すことなどもう考えている場合では無かった。黒鋼はそこに向かって走り出す。黒鋼が全力で走るのさえももどかしいように、くるくると鳥がその身を回転させる。尋常ではなかった。
火が出たような様子はない。だが、明らかにおかしい。暴風がまるでそこだけを狙っているかのように、爆発のその中心地は荒れている。雷鳴のような光と音が絶え間なく轟き、人々を恐慌に陥れた。
あまりの出来事に恐れおののき、逃げ惑う僧侶たちに黒鋼の姿を咎めようものなどいない。邪魔な人波をすり抜けるようにただひた走った。
間違いない。双子が捕らわれているのは、今、爆発したところだ。