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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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苦労人忍者の子育て話。

拍手ありがとうございます。

では下からどうぞ。








黒鋼が天照の呼び出しを受けたのは自分の仕事を終える直前だった。
敵の襲撃のない時の警護は実に退屈だ。それが戦闘を心待ちにしているような男ならば。
それも最近少しは矛先が変わってもきているのだが。
知世に預けた双子の子どものことを思い出す。あの二人は随分知世に懐いているようだから、多少迎えに行く時間が遅れたところで支障があるまい、と判断して黒鋼は天照の使いに出向く旨と答えた。

日本国の帝はゆったりと脇息に持たれかかり、姿勢をくずしている。
政や軍を指揮する時には凛とした女性だが、案外親しい者の前では砕けた性格をしているのだ。
くつろぐ姿を、侍女やら貴族やらあたりは美しいと評するのだろうが、そんな感慨など全く存在しない黒鋼には無用のものだ。
許しをえぬ前にどかりとこしをおろした黒鋼の無礼な態度にさざめく侍女たちをゆったりと手を振って退がらせた。
このあたりの頓着の無さは姉妹そろって似通っている。
「用件は」
「せっかちだこと」
彼女らしくなくどう切り出したものかと思案気に手にした扇をはたはたとかざす。
言いよどんでも仕方ないと判断したのだろう。迷っていたのは僅かな間で天照の口からは唐突に核心が飛び出す。
「稚児に欲しいそうですよ、あの子どもたちを」
「ああ?」
「寺の名は言う必要もありませんが…、まあありえない話ではないでしょう。見目麗しい稚児は一山の誉。過去にも貴族の子弟で学問を修める寮に入った者や大臣の息が稚児になった例もありますしね。
特にこたび強く望まれているのが、あの子たちが先天的に強い魔力を備えていることだということのようですよ」
「断る」
きっぱりと拒絶した黒鋼を、扇で口元を隠した天照は笑いを含んだ瞳で見遣った。
「あいつらが自分の判断でどうこうしたいってんなら俺が口を挟む謂れはねえが、これはどう考えてもそうじゃねえだろ」
「そう言うと思って断っておりますよ」
ぱたりと扇を閉じた帝は意味ありげな表情をする。
「そなたの耳に入れておいた方が良いと思ったからです。あの双子の力は強い。今回に限らずいずれどのような思惑を持つ輩があらわれるともしれませんもの」
もしかしたら黒鋼の耳に入らないところでも、何か帝や姫巫女に働きかけている者があるのかもしれない、と黒鋼は感じ取った。
天照の用件も本題はそれを黒鋼に伝えるところにあったのかもしれない。


双子の待つ部屋の襖を開けると転がるようにファイとユゥイが黒鋼の足元にしがみついてきた。
これにはさすがに驚いて瞳を軽く見開く黒鋼に双子はいつになく切羽詰った様子で言い募る。
「黒様、帰ろう」
「ね、早く帰ろうよ」
いつもの双子とのあまりの違いように驚いて、黒鋼が主でもある姫巫女に視線を移すと彼女が申し訳なさそうに笑った。
「申し訳ありません、私がつまらないことを言ってしまいましたの」
小柄な姫君が軽やかに側に寄ってそっと柔らかな髪を撫でるのに、双子は嫌がるように激しく頭を振る。
さすがに知世も苦笑しか出来ないようだった。
あれほど懐いていた知世と必死に顔を合わせないように伏せている双子を、黒鋼は抱き上げると主に短く「帰るぞ」と伝えた。
にこにこと手を振るはずの双子はぎゅっと黒鋼の肩に顔を伏せて、見送る姫巫女にも侍女にも答えようとはしない。
ひしとしがみつく双子に何となく事情は察せられて黒鋼も控えめに苦笑した。
知世のいる部屋から遠ざかる様子にそろそろと双子が顔を持ち上げて黒鋼を見つめる。
蒼い瞳が不安で揺れて、今にも泣きそうになっていた。
「黒様、ユゥイもファイもおうち帰っていいんだよね?」
「黒様と一緒でいいよね?」
「構わねえよ」
短くなんでもないことのように告げる黒鋼に安堵したように小さな唇から息が零れた。
緊張の解けた双子は黒鋼にきゅうっとしがみついたまま、ややあって耳元で小さく呟く。
「でもね、でも…ファイとユゥイね、黒様と一緒にいたいけど」
「黒様がイヤだったら我慢するから…嫌になるまでは一緒にいてね」
不意に胸を突かれる。ずっとこんなことを考えていたのかと思うと妙に切なくなった。
「お前たちが独り立ちするまで面倒みてやるから、いらん心配すんじゃねえ」
きっぱりと言い切るとそれで安心したように双子がもう一度身を寄せてきた。
いつかは黒鋼の元から旅立っていくのだろうけれど、それまではこの雛が安らげる場所であれば良い、と黒鋼は二人のしがみつく手のひらを感じながら考える。

 

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