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明日から、年内いっぱい仕事のため沈んできます。
拍手御礼小話、⑩と⑪を追加しました。
今現在の拍手御礼小話は全部で六話あります。
この御礼小話⑩⑪は渫木様からのネタ提供です。
多分渫木様の素敵ネタ振りを私は活かせていないとおも…。
渫木様の想像と違う出来だと思うと本当に申し訳ないです。ごめんなさい…!!(土下座)
でも、まだ書いていないあれやこれやそれやがあるので、日本国シリーズまだまだ続きます。
過去小話は下からです。
日本国忍軍徒然苦労話④
上司が嫁を作って所帯持ちになった。
たとえ性別が男であっても、見てくれが奇異であっても、あの黒鋼についていけるならまあいいや、と半数以上が半ば諦観の域に達している。
ただ、一人暮らしの忍にはどうしたって耐えられないものがある。
「今日のご飯はなんと知世姫からお裾分けの松茸の土瓶蒸しでーす」
「腹に溜まらねえだろそれだけじゃ」
「うんー、魚屋さんが鱸が脂のって美味しいですよーって。塩焼きにしてすだちかけて食べよう。
お汁もね、お芋と秋茄子のお味噌汁。芋のつるの佃煮も作っちゃったー」
「たいしたもんだな」
「わー珍しい!黒様に褒められちゃったぁ」
ちょうどご飯の美味しい季節。
日本国忍軍筆頭とその連れ合いが城内外問わず二人で連れ立っているのを見るたびに、独り身の忍はがくりと膝をつくのだ。
嫁欲しい、と呟きながら。
日本国忍軍徒然苦労話⑤
「行ってらっしゃーい、黒様」
「おう」
城へと向かう黒鋼をファイは炊事場から顔を出して見送った。
本当は玄関まで見送ろうとしたのだが、その手が握り飯を作っている最中なのを見てとった黒鋼に止められた。
小さな気遣いだが、幸せだと感じた自分はかなり安上がりなのだろうかとふと考える。そして素直にそれが嬉しい。
大分言葉は不自由しなくなったが、まだ身の振り方を決めかねていたファイはこうして黒鋼の留守中に家の中のことを受け持っている。
知世姫が身分を保証してくれようともしたのだけれど、何が自分に出来るのか、何をすべきなのか、それすら分からないうちには甘えることはしたくないと思った。
無言でそれを肯定してくれた黒鋼にだけ少し甘えることにして。
今日は秋晴れで、澄んだ空気が心地よい。
布団を干して、そろそろ冬用の衣類の準備などしてしまおうと決めた。
梅干を中にいれた麦飯を大きめに握り、湯気の立ち上る味噌汁の入った鍋と箸と椀を共に大き目の盆に載せて日差しの差し込む縁側に持って出た。
板張りの廊下に手ぬぐいを敷き、そこに盆を下ろす。
そうしてファイは誰もいないはずの庭に向かって声をかけた。
「えーと、木の上にいる人と屋根にいる人と縁の下の二人と植え込みにいる人で全部ですよねえ?
お仕事ご苦労様ですー。ご飯ここに置いておきましたからいつでも食べておいてくださいねー」
ざわり、と音こそないが狼狽する気配が伝わった。
「あと木の上にいる人に一言いいですかー?
葉の落ち方が不自然ですよー。それともうすぐしたら紅葉するの黒様が楽しみにしてたから、あんまり葉っぱ落としちゃわないでくださいねー?」
監視対象にばれているばかりか差し入れされてダメだしされてしまう忍など聞いたことがない。
「あの…」
「はい?」
縁の下からか細い声が聞こえた。
「…なんで気づいたんでしょうか」
「オレの監視ですよね、異国の間者じゃないかとかそういう心配してる人からの命令で。」
「…お怒りにはならないんですか」
「皆さんお仕事だから仕方ないですよね。
お疲れ様です、頑張ってくださいねー」
ついでに励まされた。
冬物どこにしまってあったかなー、と呟きながら家の中に戻っていくファイの姿を、そこかしこに隠れていた忍たちはなんとも言えない気まずい心地で見送った。