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広い心でお読みください。あと、遊女とか言ってますが女体なワケではありません。
遊郭には何やかんやの決まりごとがございますが、どうかなんちゃってパラレルなのだとご理解くださいませ。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
大門に赤々と灯された大提燈。吉原遊郭。
ここは男の極楽、女の地獄。
数多の遊女の頂点に立つ太夫の売りは一流の「張り」。
「あ!黒様だ~vねえねえ黒様、今日はオレのとこ泊まっていって?何なら居続けでもいーよ」
…のはず…。
「あの、青玉太夫。今日は両国屋さんがお見えになる日では…」
「日が悪いって断ってー」
胡蝶楼の青玉太夫。高い知性と教養に惹かれてただ一目、逢いたいと願う男は数知れず。
なのだが。
件の太夫、今現在本命に夢中である。
「黒様~」
「やかましい!大体お前みたいな太夫買う金なんざあるわけねえだろ」
ふらりと大門をくぐったが最後。あっという間に胡蝶楼お抱えの男たちに囲まれて、黒鋼は胡蝶楼の座敷に引きずり込まれた。
「そんな、黒たんが相手なら身揚げでいいものー」
身揚げ、とは遊女が自らの稼ぎで揚げ代を払うことをいう。
「あの、太夫。伊勢屋さんがどうしても太夫に会いたいと…」
「追い返してー」
太夫ともなれば気に入らない客を断ることも出来る。だが、普段はここまで露骨なことはしない。
飽く迄、黒鋼がいる時限定だった。
「黒様、どうしてオレの間夫になってくれないのー?オレの真心が通じないー?じゃあ小指切ったら信じてくれる?」
「いらん」
既に何百回と繰り返されたこのやり取りに新造の四月一日は遠い目をした。
青玉太夫がこの男にご執心なのは周知の事実だった。
客筋にもあっという間に知れ渡り、だからこそ伊勢屋なり両国屋なり、太夫の客達が焦っているのだが。
「太夫じゃなくって『ファイ』って呼んでー」
「誰が呼ぶか!」
とうとう本名まで教える始末に、楼主も煙管をふかしながら「いいじゃない、くっついちゃえば」と投げ遣りに言った。
「黒様が見請けしてくれなきゃ、オレ成金のひひ爺に落籍されちゃうのに~。ひどい~!」
「んな金あるかボケ」
「何言ってんの~。オレもう自分で身請け分くらい稼いであるもん」
「じゃあさっさと抜けろ!」
「ダメー。黒様がオレのこと引き受けてくれなきゃ嫌~」
既に痴話喧嘩じゃねえか、と誰かがぼそりと呟いた。
全くだ。
胡蝶楼から「何としてでも引き取ってくれ」と押し付けられ、連れ帰る日もけして遠いものではなかった。