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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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一話追加しました。
今現在拍手は四話です。


過去小話二話は下に収録。






日本国忍軍徒然苦労話⑫

 

綺羅綺羅しい宝石や装飾品にまぎれてそれは転がっていた。
「?」
日々贈られるものにまったく反応しないファイに、最近は贈られてくる中身もどんどん多様になっていく。
最初は明らかに貴金属や煌びやかな絹織物などが殆どだったが、最近ではそれ以外にも珍しい絵巻物や香、あるいは本当に演奏できるのか謎な装飾の楽器など思いつく限りのものが届けられていた。
螺鈿の細工を施した琵琶やら、豪奢絵や繊細な彫りの施された琴の中、それは流水菊の刺繍をされた絹の袋に入れられていた。
ふと興味を惹かれてファイは袋の紐を解く。

ころり、と中からは朱塗りの笛が転がり出てきた。


「竜笛ですわね」
知世が簡素な作りの笛を撫でてそう言った。
「りゅうてき、ですか」
鸚鵡返しのファイにこくりと頷くと説明をする。
「『竜の笛』と文字では書きます。その名のとおり龍の声を現した笛だと言われておりますわ」
ファイの見たことのある笛は、吹き口以外にも指で押さえて音階を調節するための穴が開いていたが、今姫の手の中に納まっている笛は穴はどうやら息を吹き込むための一つきりしかないらしい。
どうやってこれで演奏をするのだろう、と不思議に思い、しげしげと眺めた。
子どものように興味深そうにしているファイの姿に、帝も巫女姫も微笑みを誘われる。
退屈そうに柱に寄りかかっていた男に、黒鋼、と天照が声をかけた。
そのまま、知世の手から竜笛を受け取ると黒鋼に差し出す。その意図は明白だ。
「武芸の嗜みの一環として習ったことくらいあるでしょう」
にっこりと赤い唇が愉快そうに弧を描く。
「音曲はお前や知世の領分だろうが」
憮然とする忍者に、帝は笑みを深くした。
「誰もお前に音楽の技量など求めておりません」
天照はちらりとファイを見、また黒鋼に視線を戻す。
「けれど今はお前が奏でる、ということが肝心なのですよ」
「黒様、笛吹けるのー?」
あまりに意外でファイはきょとんと黒鋼を見つめた。じっと見つめるファイの視線に負けて、黒鋼が天照の手から竜笛を乱暴に奪い取る。
どかっと荒々しい音を立てて座り込み胡坐をかいた。
もしかして吹いてくれる気になったのか、とファイが信じられないとばかりに目を見張った。
それをじろりと睨んで黒鋼が不機嫌そうな声で言う。
「期待するな。ガキの頃に一通り習っただけだ」


数日後、白鷺城の庭を散策するファイのもとに子犬のように元将軍の息子が駆け寄ってきた。
珍しく竜笛の礼を下忍に言付けたからだろう。
少年の姿を見止めたファイは小さく頭をさげ、贈り物の礼を言う。もちろん、過分な物は持て余すので控えて欲しいということもそれとなく告げた。
それを理解したのかは分からないが、少年は嬉しそうに胸をはる。
「お前音楽が好きだったのか。だったら我が家にはもっと珍しい楽器が山のようにあるぞ!」
あまりに得意げに胸をはるので、逆に微笑ましくてファイは笑ってしまった。
「いいえ。オレはあまり音楽に詳しくはないんです。ただ…」
「ただ?」

「笛を吹く黒鋼の姿なんて初めて見て…。
とても珍しいことだから、是非お礼を言わなくては、と思いましてー」

黒様、すごく素敵だった…。
そう呟きながら、淡く頬を染めてうっとりと微笑むファイは壮絶なまでに艶麗だった。
恋敵に塩を送ったことになる少年は、二重の意味で呆然とファイを見つめた。


「本当にありがとうございました」
にっこりと礼を告げたファイが去った後も、彼はしばらく動けないでいた。







日本国忍軍徒然苦労話⑬

 

「あいつは乱暴者だぞ!」
「優しいところもあるんですよー。
この前もオレが魚捌けなくて困ってたら三枚に下ろしてくれたしー」
「大酒呑みなんだぞ!」
「はいー。二人でよく酒屋さん行くんですよー。
今のお酒そろそろ切れそうだから今日も一緒に買いに行こうねってー」
「たくさん人を殺したんだぞ!」
「オレもです」

「…あいつのどこがいいんだ、お前」
「黒鋼が黒鋼であること全て。
どこがどうとか、そんなの関係なくてオレは黒様ならどんなだっていいんです」
「好きなのか…」
「はい」


少年。只今ファイ相手に連敗中である。

常ならばその鬱憤を下忍や下仕え相手に当たって晴らすのだが、今回はぶつぶつと言った相手が悪かった。
「お馬鹿ねえ。本命のいる相手に好きかどうか聞くだなんて、自分からトドメさしてくれって言ってるようなものじゃない」
「葉栗のお坊ちゃんはお子様だからそんな機微が分からないのよ」
忍の詰め所にいたのは少年の屋敷に仕える下忍だけではなく、珍しいことに彼らの朋輩の女忍が数人控えていた。
ファイにまともに相手をされない少年の怒りをかうことを恐れるどころか、からかいのタネとしか見なしていない女たち相手ではどういう態度に出ようとも無駄である。
何時の間に知ったものやら、「葉栗」という彼の幼名でもある名前まで調べられている。幼名であるとはいっても家族以外に本当の名前を知られるなど、身分からしても許し難いことではあるが、ぐっと唇を引き結んで押し黙った。
こと舌戦において、男が女に勝つのは至難の業だ。
それは技術でも話術でも論理的な思考でもない。
一切の手心を加えない女の言葉は時として刃以上に深く深く、男の心臓を抉るのだ。
「乱暴でも人殺しでもろくでなしでも惚れ込むのを拒む理由にならないものよ」
「互いに首っ丈ですものね。お役目とはいえ独り身があの二人の警護は辛いわ」
「お子様はそれがわからないんだから幸せよねー」
だが、少年にも矜持がある。少しでも大人びたい多感な年頃にお子様お子様と連呼され、激しく自尊心が傷ついていた。
お子様じゃない!とムキに反論する姿にきらりと女忍たちの瞳が光る。
「そう?じゃああの二人がどんな風にお互いに夢中か知ってるの?」
その言葉にうかうかと乗せられて、哀れなことに少年は黒鋼とファイに与えられた部屋の覗き見、もとい警護兼監視に強引に引きずられ連れて行かれたのだった。

ちなみに、黒鋼は休暇の真っ最中で二人して昼間から部屋に篭っていた。
何をしているのかは言わずもがななのだが、青少年には刺激が強いので割愛。


一歩どころか、とんでもない段階飛ばしで強制的に大人のあれやこれやそれを知ってしまった少年は、しばらく立ち直れなかったらしい。
舌戦で女に勝つのは至難の業だ。
けれど、それ以外にも何か色々負けているんじゃなかろうか。
男同士の情事を覗き見ることに全く躊躇しない女忍たち(一部嬉々として自発的に参加する者有)の背後で、忍軍の男たちがそう囁きあっていた。

 

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