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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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僕だけのかみさまの続きです。
進まない~(涙)
花の落ちるが如く並みに長くなりそう、かつてそう思いましたが…。予想通りとか…ない、よね?

拍手ありがとうございます。

では下からどうぞ。








足の怪我で日常生活に多少の不便が出るものの大学の講義が待ってくれるわけでもなく、バイトが出来ない状況とはいえ課題やレポートの提出が重なるとそれなりに忙しい。
切り詰めた生活状況の中では正直なところファイが食事の準備をしてくれるのは黒鋼にとっては有難い申し出だった。
過去には体に良くないと分かっていても経済的に切り詰めていかなければならない場合や諸事情でまともに食材が無い時には、連日カップラーメンやら素麺で過ごさなければいけないこともあったのだから。
人間的な食事を安心して任せられる、というのは何とも心強い。
元々料理を作るのは不得手ではないというファイは嬉しそうに粗末な造りのアパートの台所に立つ。
最初の数日はファイが部屋で作っていたものを黒鋼の部屋に運んできていたのだが、部屋が隣同士ということもありそのうちファイが食材を持ち込んで黒鋼の部屋で料理をするようになった。
料理は温かいうちに食べた方が美味しい、というのには黒鋼も賛成だ。
かちゃかちゃと食器の触れ合う音と、食欲をそそる香り。鼻をくすぐるそれに不意に集中の切れた黒鋼は辞書と教科書から顔を上げた。
読書が趣味などというガラでもないので、長時間文字を追っていると眼とともに精神的にどっと疲れを感じる。
「何作ってんだ?」
「んー、フェットチーネのマテ貝入りトマトクリームソースと豚ロースのコットレットとオニオンスープ。もうすぐ出来るよ」
聞いたところで黒鋼には何が何やらさっぱりと分からない献立をあげられる。
洋食よりも和食の方が好みではあるが、ファイの料理はお世辞抜きに美味しいので文句のつけようはない。
ただ黒鋼がパンだと食べた気にならないと予めいってあるので、主食は米か今日のようにパスタであることが多い。
普段は腹持ちが悪いからと黒鋼はあまりパンを食べないのだが、ファイは時折夜遅くまで起きて課題をこなす黒鋼への夜食の差し入れには、消化にいいからとつまみやすいサンドイッチを作った。

思わず申し訳なくなるくらいに細かい気配りをするファイだったが、意外なことに以前はあまり自分で食事を用意する機会は少なかったらしい。
純粋にそれを疑問に思った黒鋼にファイは少しだけ寂しそうな顔をした。
「今までの彼氏がねー…お金があったらとにかく外食したりデリバリー頼むのが好きだったから…。
食べてもらえないって分かってて作っても仕方ないし、自分ひとり分作るような気分にはならなかったからねえ」
そう言って黒鋼が自分を見ているのに気がつき、へにゃーっと顔を弛ませた。
「だれか食べてくれる人がいるのっていいねー」
食べてくれる人がいるのが幸せだ、そう言って笑った。


食事の匂いに空腹を自覚した黒鋼はすでにレポートから意識は遠ざかっている。
手持ち無沙汰だったのでせめて食器くらいは出そうかと立ち上がろうとした途端にファイの声が飛んでくる。
「黒様、安静にしてなきゃ!」
それに小さくため息をついて黒鋼は唇を少し弛ませる。
「アホか、動かなきゃ体が鈍る。いちいちお前の言うとおりにしてたら何も出来ねえだろうが」
そんな黒鋼に呆れたようにファイは「もう」と言ってみせるが、本人が動けるというものを強制的に押し留められるわけでもなく、ただ心配そうな視線を寄越した。
二人分の料理を、とはいっても黒鋼には多めに、ファイには少なめに盛られた皿をそれぞれ運んで、二人並んで少し早めの夕食をとる。
黒鋼と二人でこうして食事を済ませた後に、ファイは自分の部屋でシャワーを浴びてから店へと出かける。
油や香辛料の匂いが残っていてはいけないかららしい。
そんな面倒くさい真似をさせなければいけないのなら、と黒鋼はファイの申し出を遠慮しようとしたのだが「食べてくれる人がいるのが嬉しい」と楽しそうに料理の準備をするファイの姿に結局言い出せなかった。

そろそろ仕事へ行く支度をしなければいけないと、ファイは時計をみて立ち上がり、作りおきの朝食を冷蔵庫に入れる。
「夜食にはチーズサンドと朝ごはん用におにぎりと卵焼きとほうれん草のおひたしを作ってあるからー」
そう黒鋼に告げてファイはいってきます、と部屋の扉から出て行った。いってきますも何も自分の部屋に帰るんだろうが、と黒鋼は言いたくなる。
食事の世話だけを頼んだつもりだったが、自分でするよりもよほど細やかで行き届いている。
ついでだからと言われて気がつけば洗濯や掃除まで終っていることだって珍しくない。
なんだかこれだけ依存しきりでは、自分もファイの過去の男たちと変わらないような気がして、黒鋼は自分のことが少々情けなくも思えるのだった。

 

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