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だめんずうぉーかーなホストと貧乏苦学生。
え、と他の男×ファイな描写がちらちらと出るシリーズですので、苦手な方は回避してください。
まあ私の食指が動かないのでそんなに濃厚な描写はありません。
一応頭の中で大体の形は決まってますので、出来たらラブいとこまでかけたらいいなー、と思ってます。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
男を見る目が無いと自分自身でもファイは思っている。
不幸の泥溜り(水溜りですらない)に頭からダイビング、とはファイの勤める店のオーナーの言だった。
返す言葉もないが、どんな最低な男でも恋愛をしている時は相手が心底好きなのだから仕方がない。そう思っていた筈なのだが。
最近どうも勝手が違う。
どうやらまたハズレくじをひいてしまったと感じたのは最初のデートからだった。
ホテルに連れ込みたい、という魂胆が透けて見える男にファイは呆れた。
下心の上にかけるカバーがスケルトン仕様らしい男は、そんなファイの心情など全く気がついていないようだったが。
多少は見られる顔だが、失敗したなあ、とファイは小さく歎息する。
気づかないフリで仕掛けられるキスを巧みに交わした。
デート相手の年下の男は仕事帰りに立ち寄ったバーのバイトで、メールアドレスを交換したのが切っ掛けだった。
マメなメールのやり取りにちょっと心が動いたのだが、実際に長時間一緒にいるとどうしても嫌な幼さばかりが目に付いてしょうがない。
(こういうタイプは一回でもセックスさせると自分が相手の上位にたったと思うんだよねー)
仄かに浮き立っていた恋の始まりが、どんどんと冷静な思考に変わっていく。
笑顔の仮面の下で、どうやってこのデートを切り上げようかと真剣に思案するファイに、男はまだ気がついていない。無論気がつかれるようなヘマをするつもりもない。
一人目・無職。ギャンブル狂。出て行ったあとも数日おきに金をせびりに来ていた。
二人目・無職。金融会社のブラックリスト入りで蒸発。
三人目・会社員。奥さんにファイとの関係がばれて無理心中を迫った迷惑男。
四人目・自称作家志望。酔うと暴れて暴力を振るったが、いつの間にか出て行った。
五人目・無職。キャバ嬢にファイの金をつぎ込んでいた。
六人目・医者。上司の娘と結婚予定だが、ファイとの関係も切るつもりがなかった。
「お前はろくでなしコレクターか」
黒鋼の冷ややかな視線の前でファイはなんとなく正座していた。
付き合った男(しかも黒鋼の知る範囲内だけでも)全員がろくでなしだったので返す言葉も無い。
おまけに付き合うには至らないにしても体の関係があったり、ちょっとちょっかいを出されたり、というレベルの相手にしたって最低な男ばかりだったのでしみじみと自分の見る目の無さを感じ入った。
いちいちそんな自分の反省会に巻き込まれている黒鋼の機嫌が、春キャベツとパンチェッタのパスタでどうにか相殺されてはくれないだろうかと願う。
「反省してます…」
冷める前に食べて欲しいな、と思ったファイの胸の内を読み取ったわけではないだろうが、黒鋼は手を合わせて少し遅めの夜食を食べだした。
それにならいファイもフォークを手に取る。
以外に行儀よく食べ物を口に運ぶ黒鋼は呆れたように言った。
「ったく、だいたい何でお前はんなことを言いにくるんだ」
黒鋼にろくでもない恋愛関係の話をしたって、怒られるだけだと分かっていて、ファイはいつも失敗を報告しに来る。
「だって…体の関係無しでこんなこと聞いてくれるの黒様だけなんだもん」
しょんぼりと肩を落とすファイの姿に少し黒鋼も同情する。
「オレが好きだな、って思っても相手にとってのオレの価値ってお金と体しかないみたいだし」
前にデートした子もそうだったし、とうなだれるファイの頭をぐしゃりと黒鋼はかき回す。
「しょげんなよ」
ぶっきら棒な黒鋼の言葉は、その態度とは裏腹に温かい。
この人が恋人だったらいいのにな、とふとファイは思う。
同時に駄目だろう、と思いもする。
黒鋼の嗜好は至ってノーマルだ。男が恋人に選ぶファイとは違う。
何よりも、汚い自分も駄目な自分も見てきた黒鋼にファイが好きだと言ってもこれほど説得力がないことは他にも無い。
せめて、突き放されるのが怖くて縋ってもいい距離の限界を探ろうとするのだけれど、怒りながらも結局はファイのくだらない話に付き合ってくれる黒鋼を手放したくないと思ってしまう。
「オレと黒様だけならとっても平和的なのにねー」
願望の滲んだ言葉に、黒鋼は苦笑しながら「そのうちお前のことをちゃんと好きになるヤツがいるだろ」と言う。
優しく優しくて、それは残酷だ。