ミイラ取りのミイラ

堀鐔小話です。
アリスの逆襲、のはずだった。
その他のことには趣味が悪いわけではないのに、時々微妙に感性のずれてる化学教師。

明後日とその次が連休なので、今年最後のまとまった休みを満喫します。
書き溜めるぞ～。

拍手もその時にお返事させていただきます。
いつもありがとうございます。

では下からどうぞ。

仮装パーティー。
その時から、嫌な予感はしていたのだ。

ジャケットとパンツは揃いで白、立て襟のダークグレーのシャツに柄物のベスト、仕上げに青いアスコットタイ。
どこからどう見てもその筋の人にしか見えないお約束なファッションの仕上げとばかりにファイは白いマフラーをその首にかけた。

コンセプトはそのものズバリ「マフィア」。
数日のうちに用意された衣装一揃えが、まるで誂えたようにサイズがぴったりなことも、ちらりと見えたのが有名ブランドのロゴであることも、深く考えると恐ろしい結論になりそうで聞けはしなかった。
半ば以上ヤケでもういっそ開き直って、笑いたきゃ笑え、とばかりに大人しくファイの好きなようにさせていた黒鋼だが、不意にファイの動きが止まったのに気づく。
黒鋼の首にマフラーをかけた状態のままうつ向いて肩が震えているファイ。
笑いたきゃ笑えとは思っても、実際そうされると腹立たしいことこの上ない。
「おい」
苛立たしく呼び掛けた瞬間、ガバッとファイが頭を上げた。

「黒様かっこいい…」
化学教師の瞳は恋する乙女だった。

こいつ趣味悪ぃ…。

心の底からそう思った黒鋼だったが、かろうじて口にはしない。