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間に原稿挟んでバタバタしていたので遅くなりました。すみません。
他のも同時進行で書いてます。
mire様からのリクエストで「黒ファイ(女体)で堀鐔か現代パラレル」です。
堀鐔の先生たちで書かせていただきました。
裏タイトル『そうだ京都へ行こう』
…そのまんまですね。
では下からどうぞー。
修学旅行の下見、と唐突に上司から出張を命じられ新幹線のチケットを渡された。
二時間目の授業が終ったばかりだった。指示を聞いたその足で行け、ということらしい。
同行者は先に現地入りしているから、という言葉に軽い不安を覚えながらやむなく、蹴り出されるようにして黒鋼は学園を後にした。
手回しの良いことに、校門を出ると既にタクシーが停まっていた。
指定された駅に降り立つと、予想通りの混雑だった。
ちなみに駅名が書いてないので、駅のど真ん前でこの駅を探している旅行者に「〇〇駅はどこですか」と聞かれるので有名らしい。
目的地に着いた黒鋼は、予想通りと言うか、予想したくなかったというか。同行者、という単語の時点で薄々と感づいてはいたのだが、はっきりと確定させたくは無かった人間がそこに立っていた。
ご丁寧に『修学旅行(練習)のしおり』まで持っている。
有数の観光地の主要な駅だけあって外国人の姿は多いが、その中でもやたらとキラキラしている金髪碧眼は否応無く目立つ。
「黒様~。待ってたよー」
呑気に手を振るファイに頭が痛くなった。
「あのね、一日目は清水寺と高台寺の見学でね、夜は日本料理で作法のお勉強だって~。二日目は自由行動。オレ三十三間堂とか金閣寺行きたいなー。あとね、抹茶と白玉のパフェが食べたーい。でもでも、雑誌で見たステンドグラスの飾ってあるお店も可愛かったんだよ~。あ。舞妓さん見れるかなー?三日目は映画村で遊んだ後に帰宅」
「ノリノリだな、お前」
もうこれはあれだ。間違いない。魔女の企みだ。
『そうだ京都へ行こう』
そんなキャッチコピーが頭をぐるぐると回った。
ファイは相変わらずうきうきと浮かれている。薄いグリーンのシャツに白いパンツという軽装である。
荷物を用意する暇もなく追い出された黒鋼も、ジャージではないというだけで上下黒の軽装だった。
これでどうしろと言うのだ、と思ったがその辺りは周到に、既に旅館の手配まで済んでいるとなればその他の準備も同様に抜かりないに違いない。
黒鋼は大きく溜息をついた。
黒鋼とファイは同じ学園の教師である。
受け持ちのクラスも隣、教員宿舎の部屋も隣とあって、他の教師たちよりも仲が良い。
自然とその関係が深くなり、どちらからともなく好意を寄せて付き合いだした。といってもまだ恋人同士としての日は浅い。
だが、なまじ互いの仕事に理解があるものだから、気を遣いあって恋人らしいことなどまともに出来た覚えがない。二人でいてもついつい職場でもある学園や生徒たちのことに話題は集中しがちだ。
このままじゃさすがに不味いのでは、と思い始めた矢先だった。
あの理事長におそらく読まれているのだろうな、と分かりながらも苛立ちと脱力感にどっと襲われる。
職場で特に関係を隠しているわけでもない。
プライベートのことだ、放っておいてくれ。そう思っても、目の前で嬉しそうにはしゃぐ恋人を見れば、悪い気はしないのも事実だ。
黒鋼の溜息に気づいたファイの表情が曇る。
「黒様…ごめんね、迷惑だった?」
黒鋼が気乗りしてないと思ったらしく、殊勝に謝ってくるファイの姿に黒鋼も意地を張り続けることを諦めた。
「いや、急で頭がついていかねえだけだ」
緩く頭を振って答えると、ファイは嬉しそうに控えめに笑った。そんな表情を職場で見せることはない。
だからやはりこれはこれで良かったのだろう。黒鋼はぼんやりとそんな顔を見つめながら思った。
下見、の名目を与えられたのだから羽目を外しすぎるのはまずいだろうが、少しばかり恋人気分でこの時間を楽しむのも悪くはない。
「昼飯食いながら予定確認するか」
そう言うとファイが嬉しそうに「うん」と頷いて黒鋼の腕に抱きついた。
「オレね、黒様がくるまで日本料理の時の作法の勉強してたんだよー。床の間に鞄を置いちゃ駄目、とか食器の扱い方とか色々あるんだねー」
「そうか」
「そうか、じゃないよ~。黒様だって意外と行儀にきびしいじゃない」
「別に普通だろ」
「普通よりちゃんとしてるって侑子先生が言ってたよー。『お父様お母様がちゃんと躾してるお家の子よ』って」
適当に入った店でコーヒーを飲みながらそんな話をする。
ファイに渡された修学旅行のしおりやパンフレットを流し読みしながら、黒鋼はそっとファイの様子を窺った。
やはり嬉しそうに笑っている。
ファイが示したパンフレットの中に、昔母が父に連れて行ってもらったのだと言っていた喫茶店があったから、そこに連れて行くのも悪くないと思った。
青い硝子に彩られた店の中はきっとファイに似合う。
おまけ
「侑子さん、なんで黒鋼先生とファイ先生が揃って出張なんですか」
「修学旅行の下見はだーいじなお仕事でしょ?」
「今年の修学旅行って…『とにかく美味しいドルチェとワインが食べたい飲みたい!』って言ってヨーロッパ周遊でしたよね」
「そうよ」
「京都関係ないっすよね!?」
「大有りよ。いつもと環境の違う旅空の下。邪魔者は無し。となれば!健全な成人男性がここで手を出さずしていつ出すの」
「それ、下見関係ないし!」
「出来上がって帰って来る、に秘蔵の芋焼酎賭けたのよ」
「いやいやいや!?賭けちゃ駄目でしょ!?」
修学旅行の下見、と大義名分をつけられた強制婚前旅行から二人が帰ってくるまで。後二日。