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いやもう女体とか好き勝手やってて申し訳ありません。
だって好きなんです。
許容してくださる皆様に大感謝。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
不思議そうな顔をしてファイがぺたぺたと自分の腹をさすっている。
じっと視線を落とすそこはぺたんこで、いつもとなんら変わりがないように見えた。
帯の上から触っても分かるわけがないだろう、と黒鋼に呆れられたのはつい先ほどのことだった。
それでも確かめたくて、何度も何度も触ってしまう。
実感が全然ない。
薬師に「御懐妊ですよ」と言われて、聞きなれない言葉に首を傾げた。
傍にいた黒鋼と侍女の方が先に反応して、口々に喜んでいるのが何故だか分からなかったのだ。
やたらと眠たくて食欲がないので、心配した侍女に勧められ念のために薬師に見てもらった。
この様子では何か悪い病気だった、ということはないらしいが、一体「ゴカイニン」とは何のことなのだろうか。
そう眉を寄せたファイを急に黒鋼が抱き寄せた。
普段人目のある場所でこんなことをする人ではないから驚いたのだけれど。
珍しく、穏やかに笑う彼の顔を見たので、よほど良いことだったのだと思い直す。
それでもまだ分からなかったので素直にファイは聞くことにした。
「黒様、『ゴカイニン』って何?」
一人だけ事態が分からずきょとんとしているのが、領主に抱きしめられている巫女当人だった。
子どもが出来たのだ、と黒鋼に教えてもらってさらにぽかんとした。
ファイは元々その身に宿した魔力が強すぎて、通常の生命体と比較にならないくらい長命だった。
命が長いということは、その分子孫を残すという必要性が薄いことだと本能は判断する。
それに加えファイは自分に課せられた業を知ってから、己の体の作り自体を産まれついた性別とは異なるように変えていた。
黒鋼に手をひかれこの国に辿りついてから、その魔術を解き元の体に戻ったのだが、ずっと男の体で生きていたことを何よりもファイの体自身が覚えており、外郭だけが女に戻っても中身まで女性としての機能が正常に働くことは到底ないだろうと思っていた。
だから女に戻った後、黒鋼が諏倭の領主に、自分がその巫女に決まった後でも、こんな風に一緒にいられるなんてことは想像しなかった。
あえて求めないようにしてきたこともある。
領主にはその血を引く跡継ぎが必要だと思ったし、自分ではその責を果たすことは出来ないと思ったから。
近臣が黒鋼に跡取りを望んでいるのを知って、気立ての良い娘を選んで差し向けたこともある。
無論、それがファイの差し金だと知った黒鋼は激怒した。
ファイでさえ怯えを覚えるような剣幕で怒鳴りつけられ、そのまま抱かれた。
女の体に触れられたのは初めてで、男の体とは全く違う反応に戸惑うファイが、自分の体が溶けてなくなりそうだと思うほど濃密な交わりだった。
次代を望めないから、と何度も突き放したファイの体を逃がさないように抱きしめながら、黒鋼は短く言い放つ。
「お前以外は選ばねえ」
押しつぶされそうな罪悪感と、それを上回る喜びにファイは何度も泣いた。
自分の体が次の生命を繋いでいけることが信じられなくて何度も何度も腹をさする。
これから半年近くかけて、この中で命が育つのだと聞かされても俄かには信じられない。
ましてや自分と黒鋼の血を引く子どもだなんて。
何度も何度も確かめるように撫でるうちに、いつの間にか黒鋼が傍に来ていた。
「どうした」
穏やかな男の声に滲むのは間違いなく喜色で、それでようやくファイは何もかも本当のようだと思えた。
「まだ…よく分かんなくて…。本当に、いるのかなって思ってた」
ぺたんとした腹部を両手で押さえて、首を傾げるファイの様子は本当に不安げで、黒鋼は落ち着かせるように背後から抱く。
大人しく身を預けると、黒鋼の匂いに包まれた。
「産みゃわかるだろ」
「そっか…」
とくり、とくり、と鼓動が肌から伝わるたびにファイの体から不安や恐怖が少しずつ消えていく。
不思議で不思議でしようがないのは本当だったけれど、黒鋼の押さえきれない喜びようを見ているとそれだけで満たされる気持ちになる。
ゆっくりと身を預けたままファイは瞳を閉じた。
もし本当ならば、早く会いたい、そう思って。
それが幸せなのだと分かるのはそれほど遠い未来ではない。