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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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春望の続きです。
誰ですか、十話くらいで終らせたいとか言ってたのは(涙)

そういえばこの話はファイがナチュラルにストーキングしてることに昨日気がつきました。
化学教師より実害がなさそうなのでいいよね…。


バジリスクのDVDはもう無かったです…。
ちぇーっ。

拍手ありがとうございます。


では下からどうぞ~。







里の子ども達を先導役に忍がファイの住まいを訪れたのは程なくしてだった。
いつ訪ねても留守のファイに痺れを切らしたのだろう。子どもたちが遊びに来る時は姿を隠していなかったので、その子どもを案内にすればファイに会えると思ったのか。
そろそろそんな頃合だと考えていたファイはさして驚きもしなかった。
気づかれないようにしていたつもりだったろうが、ファイの身辺にはこの数日昼夜関係なく見張りがつけられていた。知りながらあえて泳がせていたのだ。
その上で山に誰か覚えの無い気配が進入するのを見計らい、わざとらしくない程度に山の奥まで薬草を摘みに出てみたり、と家をあける。
勿論その間も見張りの目は休むことはない。それを逆手にとって、ファイが忍の姿を見て逃げ出したのではない、という裏づけをさせるためだ。忍の訪れを故意に避けていることを悟らせないようにするのはさして難しいことでもなかった。
隠れているつもりでもファイにははっきりと何人いるのか、どこから見ているのかまで分かる。
ファイは魔術師であるが、同時に戦うための術を身につけてもいる。数年鍛錬を積んだ人間とは年季が違った。

「露草様ぁ、お客様だよ」
子どもの声に開け放したままだった扉から外へと出る。強くなってきた日差しに目を細めた。
子ども数人に先導されて二人、忍らしき男が立っていた。細い三日月の紋を纏う男はどちらもまだ若い。そのうちの年長者らしき男がファイに声をかけた。
「露草、というのはお前か」
「ええ、そう呼ばれています」
にこりと答えて、ファイは子どもたちに草餅を渡すと今日は帰るように促した。
不満そうだった子どもたちだが、ファイが「この人たちはお仕事でここに来てるんだよ。邪魔しちゃ駄目」と諭すと渋々頷いた。
名残惜しげに手を降る子どもたちを見送ってから、二人を小屋に招き入れる。茶など当然用意は出来ていないので出せる物は白湯くらいだったが、忍たちはそれを固辞した。
ファイの予想通り、聞かれたのはファイの素性やここに住みついた理由だ。
孤児で本名は自分も知らない、育ててくれた人も無くなり身寄りも無いのであてなく一人旅をして今はここに住み着いている。
傍から聞いても実に怪しい。やはり同じように思ったのか忍二人は渋面だった。
仕方がない、とファイも思う。
「小さい頃から色んなところを転々としてましたから、旅先で会った人から教わったことなんかを見よう見真似で覚えて…。簡単な医術や術なんかも身についたのでどこに行ってもそれなりに暮らしていけますしねえ」
のんびりとそう言うファイに痺れを切らしたのか、苛々とした様子で殊更に若い忍がぽろりと「そんな胡散臭い話を」と溢してしまった。
さすがに年嵩の忍が嗜めたのだが、思わずファイは口元を押さえてしのび笑いを漏らしていた。尋問すべき相手に笑われているようでは格好がつかない。
困ったような、決まりが悪いような表情の忍二人に「すみません」と断ってどうにか笑いをおさめる。
「昔知り合いだった忍者さんもそんなことを言ってたなあ、と思いまして」
途端に気色ばんだ様子で忍がファイに問う。
「忍に知り合いが?」
「ええ、白鷺城の忍軍だったそうです。…昔のことですけど」
今は関係ないのだと言外に匂わせる。
「その者は今は?」
「さあ、…事情があってその人とは疎遠になってしまいましたから」
事情、という一言に忍の目の奥がぎらりと光る。不穏なことであれば容赦はしない、とでも言いたいのだろう。
促されてファイは苦く唇を歪ませた。
「一方だけが思っていても、それはもう繋がりではないでしょう」
野暮なことを聞くものだと含ませてただ笑ってみせる。それだけのことにひどく胸が痛んだ。
さすがに気まずい顔をする忍には気づかない振りで、ファイは微笑んでそっと視線を逸らした。
「ここは平和で、いいところですよ。…何かを忘れるのにもね」
ファイの言葉に何一つ偽りはない。
険しく見つめていた忍もそれを理解したのか、しばしの間ファイを凝視していたがややあって警戒すべき人間ではないと判断したのか、頭を下げて辞去の旨を告げた。
それを見送りながら、ファイはその背中に告げた。
「もしそれでもオレがここに置いてはおけないようなら、すぐにでも出て行きますよ。元々根無し草ですから旅は慣れてます」

そう、旅は慣れている。
慣れないのは、誰かといたことが忘れられない、一人、ということ。

困ったような、何ともいえない奇妙な顔をして言葉を飲み込んだ相手にファイは笑って見せた。
それが、どれだけ寂しそうな笑顔なのかも知らないで。


 

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