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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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日本国永住設定長編、続きです。
冒頭若干濡れ場。飽く迄若干です。
今年に入り始めた長編はこのお話で完結とさせていただきます。
長くお付き合いくださいましてありがとうございます。


拍手ありがとうございます。

それでは下からどうぞ。








指を絡める。唇を触れ合わせ、吐息を繋ぐ。
与えられる熱を持て余して、逃げるように頭を振ると金色の髪が敷布の上で踊るように跳ねた。
「ゃ、あ…」
腰の奥でうねるように暴れる快楽の灯火が、脳髄までを焼き尽くしてしまいそうだ。
喉元からせりあがる苦しさは、吐息に混じれば自らさえも耳を覆ってしまいたいような淫らな喘ぎにしかならない。
その恥じらいさえも、触れられる肌の前にはたちまちのうちに掻き消されてしまう。
ぐっと最奥を穿つ熱塊に小さな悲鳴を上げると、ファイの体の上で黒鋼が唇の端を上げて笑った。
それを憎たらしいと思うよりも先にファイの腕は伸ばされ、逞しい首を抱き寄せる。
「くろがね…」
舌足らずな声で呼べば、黒鋼の赤い瞳がすっと細められる。
獣のような彼の雄の表情を見るのが、ファイは堪らなく好きだった。
こんなにも互いに何もかもさらけ出して求めている。
「くろがね…」
快楽よりも、苦しさよりも。幸福が体の隅々までを支配する。

「くろがね」
壊れたように何度も繰り返すたびに、幸福が満ち満ちていく。
それがファイの幸せの呼び名であり、愛しているということ。



 

手慰みに琴をかき鳴らす姉の手がふと止まる。
「お姉様、どうか?」
それに聞き惚れていた妹姫がどうしたことかと尋ねた。
それぞれ政と祭祀の長に役目を分かつ帝と姫巫女だが、その姉妹仲は悪くない。
二人の趣味が音曲に共通していることもあって、こんな風にくつろいだ時にはどちらからともなく互いの鍛錬の成果を披露するのだ。
姉は琴、妹は歌。
意外なことのように思われたが、歌舞音曲は位のある者の教養としては必須のものだ。
また古来よりも武人は精神の鍛錬として、巫術や鬼道にたずさわる者は目には見えぬ神や精霊と心を通わせるために楽器を奏でることを求められる。
奇異といえば巫女でもある妹よりも姉の方が琴を得手とすることくらいだが、姫巫女とて琴の教養がないわけではない。ただ奏者としての姉の腕が神懸りなだけである。
調弦のための調べに耳を傾けていた妹が首を傾げるのに、姉はすいっとその指先を開け放たれた窓の向こうに向けた。
妹姫は幾重にも重ねた衣装の重さなど感じさせない軽やかな足取りで、たた、と庇に走り出る。
城の造りは戦に備えて堅固ではあるが、けして風流を楽しむことを忘れているわけではない。
要塞としての機能性を備えながらも花鳥風月を愛でることの出来るよう造られたこの国の城だ。
城の上階に月見台として作られたそこからは、眼下の庭の様子が良く見て取れた。
「あらあら」
姫巫女の頬が緩まる。姉の琴が中断されたのは残念だが、これはこれで楽しい眺め物だった。
欄干に両の手をつき、下にいる人物たちを眺める。
見知った黒い装束の男の傍に寄り添うように、白い小袖のほっそりとした人間が寄り添っている。
先日贈った濃色の帯を身につけてくれているのを姫巫女は内心喜んだ。
今までだって城に来る時には二人のことが多かったが、最近は何となく二人を見るのが面映いのだと皆が口を揃えて言うのが分かる気がする。
ファイの手が慎ましげに黒鋼の袖を掴んでいる。何か話しているらしいが、さすがに唇までは読めない。
「あてられますね」
行儀悪く頬杖をついた妹を咎めるでもなく、姉もいつの間にか隣に寄って二人を眺めていた。
「皆があの二人を直視出来ないというのもわかりますわねえ」
何かが変わったわけではない。けれど、二人の関係に何か大きな進展があったのは明白だった。
おそらくは思いを通じ合わせたのだろう。
殊更に何かあった痕跡を残すような馬鹿な真似はしない。けれども関係を持った人間同士によって醸し出される空気というものは隠しようがないのだ。
それが体だけでなく、心の奥底まで繋がりあった者同士であるならば尚更に。
殊にファイの変わりようは顕著だった。
以前から否応無しに目立つのは金髪碧眼というその容貌ゆえだったが、今の彼が思わず人の目を奪うのはそのためではない。夜に漂う梅花の香気のように、目には見えずとも人の心を惹かずにはいられない艶冶な気配に溢れている。
零れるほどのその艶やかさを笑みに綻ばせて見つめる先が黒鋼ばかり、となれば同居人に過ぎなかった二人の関係の変化を想像するのは容易い。
あからさまではないとはいえ、恋の幸福感に満ち足りた人間を露骨に見つめるのは不躾でもあったし、何よりも当人たちが意識していない空気の変化が周囲にとっては逃げ出したくなるような照れくささに感じられるのだ。
今から家に帰るのであろう二人の足取りは、春の訪れを感じさせ始めた庭を散策しながら外門へと向かっている。
さすがにこれ以上見ていてあてられ過ぎるのは勘弁だと、姉妹は屋根のある室内へと戻った。
あまりに幸せそうにされては揶揄う気も湧いてこない。
「そういえば月読、花盗人は罪にならぬそうですよ」
帝は何とはなしに思い出したことをそのまま口にする。
特に思惟のあったことではないが、妹姫は悪戯っこのように瞳を輝かせた。
「あら、元から自分の物だったと主張するに決まっていますわ」
誰が、とは言わないがすぐに仏頂面の男の顔をしまい揃って思い浮かべ、互いの顔に笑みを浮かべた。
くすくすと姉妹の穏やかな語らいの時に忍びやかな笑い声が響いた。



二人並んで歩く。
少しだけ歩幅の違う二人の足音は重なったり、ずれたりしながらずっと同じ道行きを歩いていく。
袖を掴んでいた手が遠慮がちに黒鋼の手へと伸ばされ、控えめに指先に触れた。
不意に止まってしまった歩みに、やはり外でこんなことをするのは駄目だったろうかとファイは少し反省した。
だが、黒鋼は黙ってファイの手を自分の手で掴むと再びざかざかと歩き出す。
慌ててその歩みにあわせて足を進めるファイが黒鋼の顔を歩きながら仰ぎ見る。
信じられないような気持ちで黒鋼の顔を見つめ、次に自分の手をしっかりと握りこんだ掌の温度を感じた。
繋がれた手から、じわじわと熱が移っていく。

泣きたいくらいに幸せだなんて、陳腐な言葉なのだけれど。
今の自分ならばそれを信じることが出来る。早く帰ってそれを黒鋼に伝えたいと思った。

もう一度、心の中で、幸せの名前を呼んだ。


 

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