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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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20万ヒット記念フリリク第一弾です。

みずしま様リクエスト
「黒鋼を取り合ってまたは譲り合って双子が喧嘩し、でもすぐに仲直りする話」です。
堀鐔設定ではあるのですが、黒双子なのでこちらにカテゴリーは入れました。

風邪も治りましたので、リクエストをどんどん片付けたいと思います。


拍手ありがとうございます。


では下からどうぞー。








いつも通り――という言い方が既に馴染んでしまったのもどうかと思うのだが、夕食に呼ばれた黒鋼は双子の微妙な空気に首を捻った。
特別繊細ではないが、さりとて鈍感でもない。少なくとも第三者には絶対に気がつかれないであろう、双子の形容し難い距離感に気づく程度には気配を察知することが出来る。
上司である理事長あたりは獣の嗅覚とそれを呼ぶのだろう。
はた目にはいつも通りの笑顔でオーブンからグラタンを出してくる弟と、部屋のインテリアにはそぐわない炬燵の上にサラダを並べている兄。
さてどうしたものか、と黒鋼は頭の片隅で一人呟いた。

「で、何が原因だ」
唐突な問いかけにユゥイの手がぴたりと止まった。しまったなあ、と悪戯をしでかした子どものように視線をさまよわせる。
黒鋼は無言でユゥイの言葉を待った。
いくらか考えはしたが、もともと人の裏をかいたり策を巡らすのは得意ではないのだ。それを無理に捻ったところでたいして良い案が出るわけでもない。
ごちゃごちゃと埒もない考えを巡らせるよりも単調直入に問い詰めた方がいいだろう、と判断した。
ユゥイの逡巡は僅かだった。先に浴室へと入ったファイがすぐには出てきそうにないことを確認して「あーあ」と溜息まじりの声を零す。
「やっぱりわかっちゃうんですね」
「あれだけ妙な態度をとっておいて今更だな」
「他の人は気がつきませんよ。絶対に」
困ったように、けれどどこか照れくさそうにはにかんでユゥイはぽすんと黒鋼の横に腰を下ろす。
滅多にない遠慮がちに甘えるようなその仕草に黒鋼の口元が微かに弛んだ。
「喧嘩でもしたのか」
「喧嘩、なんですかね」
お互いの言い分がぶつかって、と言葉を濁したユゥイに黒鋼は話の続きを促す。
「だって、オレもファイもね、あなたとこんな風に過ごせるなんて思ってなかったから」
言い回しは曖昧すぎてそこに含まれる範囲は果てしなく広い。けれどその意味をなんとなく察して、黒鋼は少しばかり座り心地の悪い思いを味わった。
双子ののどちらとも付き合っている。その事実だけ抜き出せばそれは妙に背徳的で、おおよそ受け入れられないことだろう。
けれど実際にはどちらかの手を離して、どちらかを選び取ることなど論外以外の何でもないことだと既に思っている。
背徳や禁忌など、生身の温もりの前ではどれだけ意味があることなのか、と切り捨てた。
躊躇わなかったと言えばそれは嘘だが、そこに後悔はない。
口に出さずとも伝わっていることだと黒鋼は思っているし、何度か言葉で伝えたこともある。
それでも時折、迷子の子どものように不安がるのは双子のどちらもで、そんな部分はよく似ていた。
柔らかく波打つ髪に手を差し込んで、くしゃりと撫でればユゥイは安心したように目を細める。
薄い唇がぽつりぽつりと言葉を紡ぐのを黒鋼は黙って聞いていた。

「ファイはね、オレに負い目があるんだと思う。そこまでいかなくても遠慮っていうのかなあ。オレよりも先に黒鋼先生に出会って、オレよりもずーっと長い時間一緒にいたから。その分を埋めなきゃ、って思ってるみたいですぐに自分だけ身を引こうとするんだ」
そんなのオレはちっとも嬉しくないのに。
ぽつんと呟かれた声が妙に寂しげなのを黒鋼は軽い溜息で受け止める。本当によく似た兄弟だ。
「それで喧嘩したのか」
「だって…」
「まったくお前もあいつも…」
いささか不機嫌そうに言葉を吐き捨てる黒鋼に、ユゥイが申し訳なさそうに首を竦めた。

「ねえ黒様もお風呂入っていくー?ってかいっそ泊まってくー?」
そうしようよー、と声をかけたのは風呂上がりのファイだ。まだしっとりと濡れている髪をタオルで拭きながら、何でもない顔をして暖房の効いた部屋へと入ってくる。血色の良い肌からは湯気があがっていた。
「…」
「なあにー?」
こてん、と首を傾げたファイに黒鋼はつかつかと歩み寄ると…問答無用で背後から羽交い絞めにした。
「…あれー?」
「黒鋼先生?」
まったく同じタイミングで首を傾げる双子の、弟の方に黒鋼は短く命じた。
「擽れ」
「は?」
「暴力で解決はさせるつもりもないし。が、まあ意趣返しにはちょうどいいんじゃないか?」
きょとん、とファイと黒鋼を見比べていたユゥイだったが、その言葉を意味を理解し思わず噴き出した。
「たしかに…そうですね」
「え?ちょっ…黒様ぁ?ユゥイ!?」
「ファイごめんね。でも仕返しだから許してね」
「たんま、たんまー!!」
にこりと笑顔の弟に顔を引きつらせてファイが待ったをかけるが、生憎と背後からがっちりと黒鋼に抑えられているため逃げようがない。
数秒後、悲鳴とも笑い声ともつかぬ声が部屋に響いた。

息も絶え絶えに大きく肩を震わせるファイに溜飲が下がったらしいユゥイは、随分とすっきりした顔をしている。
「…ひ、ど!っ、ユゥイ~」
「仕返しだもん」
ふい、とユゥイが膨れてみせれば身に覚えのあるファイとしてはそれ以上責められないのだろう。ばかーばかー、と子どものように悪口を言うだけにとどめている。
それを見ながら黒鋼は「さて」とひとりごちた。
無防備なユゥイの背中からひょい、と腕を差し込むとこちらもあっさりと拘束された。あまりに呆気なく、拍子抜けさえしてしまう。
「え?あれ?黒鋼先生?」
「兄貴の次はお前だ。この馬鹿。
どうせお前はお前で『後から自分が割り込んだようなもんだから』って引こうとして言い合いになったんだろ」
「…!」
蒼い瞳を真ん丸にしてユゥイは黒鋼を見つめる。図星だったようだ。
本当につまらないところばかり似ている双子だ。
「ユゥイ―。さっきのお返しだよー」
事態を察知したファイが早くも復活し両手をわきわきとさせている。実に楽しそうだ。
「え、嘘っ!ストップ!」
「駄目ー。オレも擽っちゃうもんねー」
数分前の再現に、黒鋼は自分の提案ながら騒がしいな、なんて考えていた。


そして、笑いすぎて苦しそうに息を上げる双子の頬をそれぞれ軽く抓って、それで仕置きは仕舞いだ。

つまらないところばかりが似ている。だから手離してやれないのだとさっさと分かれ、と思うのだ。



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