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子育て話(笑)の続きです。
今原稿最終詰めの真っ最中です。
死ぬ、これ。オフの感覚忘れてた。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞ。
「では、決まりですわね」
「「はーい」」
「…」
にこにこと穏やかな微笑を浮かべる姫巫女の声に、舛花色のお仕着せの着物を着せられていた双子は元気よく返事した。
忍者一人が憮然とした表情で無言を貫いている。
それはそうだろう。
日本国忍軍・忍者黒鋼。主知世姫より、今日から子どもの世話を命じられる。
世間一般的に子育ては忍者の仕事ではない。おそらく。
だが、異国生まれの子ども二人は黒鋼に戦の報償として差し出されたもので、黒鋼が引き受けない限りはその存在は不要のものとなるのだ。
敵と見なせば命を奪うことに躊躇いを覚えない忍だが、さすがに何の罪もない子どもをそうと分かって見殺しにするのも後味が悪い。
金髪碧眼という奇妙な容貌だが、あどけない顔で黒鋼の横にちょこんと座る双子の命をむざむざと捨てさせるわけにもいかない。
だが、まさか自分が面倒を見るはめになろうとは思わなかった。
あてつけがましくため息を吐き、そっぽを向いた忍者の横で、幼い双子は行儀よく正座してかしこまっていた。
彼らの生まれた国に正座という風習は無かったらしいので、時折体がぐらつくのは愛嬌といったところか。
いい加減姫君たちの他愛ないお喋りに付き合うのもうんざりしていた。
「もう用は無えんだろ。だったら俺は帰るぞ」
「まあ、せっかちですわねえ」
そう言いながらもこれ以上引き止めても無駄だとわかっているのだろう。姫巫女は黒鋼が立ち上がるのを止めなかった。
「くろさま、帰るのー?」
「じゃあ、ファイとユゥイも~」
立ち上がった黒鋼に置いて行かれまいと、双子も慌てて立ち上がった。筈だった。
「「みゃわ!!」」
奇妙な鳴き声のようだった。
立ち上がった途端、双子は奇声を発してへにゃりと蹲ってしまったのだ。
どうしたことかと覗き込む大人たちの前で、双子は大きな瞳に涙を浮かべた。
「足、痛い…」
「足が変だよぅ…」
慣れない正座に足が痺れたのだ。
立てない、痛い、と半泣きになってしまった双子の様子に黒鋼は眉間の皺を深くしながら、無言で双子の着物の裾を捲り上げる。
「嫌だ嫌だー!痛いー!」
「痛いー!触っちゃ嫌だー!」
「やかましい」
暴れる二人を容赦なく押さえつけて柔らかい脹脛から足の裏までを丹念に揉み解していく。
足の痺れの解消にはこうして血の巡りが良くなるように促してやるのが一番なのだが、そもそも足の痺れ自体に慣れていない双子には拷問にも等しかった。
痛い痛いと泣き叫ぶ双子と、問答無用で二人の足を揉んでいる忍者の姿を、姫巫女と帝は微笑ましく眺めていた。
一人、蘇摩だけがおろおろと止めるべきか否か迷っていたのだが。
結局ぐすぐすとべそをかきながらも双子が忍者の足元から離れようとしないところを見ると、相当に懐いているらしかった。