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この話もようやく元々目指していた展開に辿りつきました。
いえ、本筋に関係ない小ネタはいっぱいあるのでまだ当分は終らないですが。
昨日インテックスにて相方スペースまで足をお運びいただいた皆様、大変ありがとうございます。
持って行ってもらった本はどうやらほとんど無くなったようですので、今現在相方手元には当方の本はありません。
ただいまリクエストと原稿の煮詰めしてます。
九月の休みもびみょーな感じですが頑張ります。
拍手ありがとうございます。
では下からどうぞー。
知世姫から黒鋼以外の庇護者を見つける気はあるか、と尋ねられてから双子はすっかりと白鷺城への登城を嫌がるようになってしまった。
朝餉を終え、城へ出向するための身支度をしていた黒鋼に、双子は一生懸命留守番を申し出た。
「あのね、黒様。ファイもユゥイも今日はおうちでお留守番してる。えと、えーと箪笥の中をお片付けしなきゃいけないから!」
「あとね、お習字の練習するの。汚さないようにするし、朝ごはんの時にちゃんとお握りも作ったからお腹がすいても大丈夫」
ここのところずっとこんな調子だ。
もしかしたら自分たちが黒鋼の側から離されてしまうのでは、と恐れているようだ。
勿論知世姫とてそんな無体な真似をするつもりは一切無い。双子が父母のような存在を欲しがるかもしれない可能性を考慮しての言葉だったのだが、知世の予想以上に双子が黒鋼に懐いてしまっていたのだ。
城に上がればまた同じように何か言われるかもしれない。
それを恐れた双子は家に篭りがちになった。
黒鋼も小さく息を漏らす。
びくりと双子の肩が揺れておずおずと長い前髪の隙間から蒼い瞳が黒鋼を窺い見る。
強い拒否とかすかな怯えが色濃く漂う蒼に黒鋼も強くは出られない。双子が悪いのならばまだ叱りようがあるのだが。
元々は知世にも懐いて、術や魔力の制御の手ほどきを教えてもらうために城に上がるのを心待ちにしていたのだ。少しすればまた前と同じように屈託なく城に行きたいと言い出すだろう、と黒鋼は考えた。
心配なのは本当だが、今までだって二人きりで留守番をさせたことがないわけではない。
黒鋼の住んでいる小さな家も知世から与えられた物である。白鷺城の城郭の一端にあり、警護の名目も兼ねて本丸からもそれほど離れていない。
異変があれば他に同じように暮らしている住人が気がつくはずだ。
「ちゃんと留守番出来るな」
屈みこんで目線を合わせて聞けば、弾かれたように答えが帰って来る。
「うん、ちゃんとする!黒様帰って来るまで待ってる!」
「勝手にお出かけしないし、危ないことはしないよ!」
頷く二人の頭をくしゃりとかきやり、黒鋼はきちんと留守番をすることを約束させて二人を残して登城した。
黒鋼を見送りながら二人はその姿が小さく小さくなるまで手を振っていた。
けれど夕刻、帰って来た黒鋼を待っていたのは。開け放たれた扉と誰もいないがらんとした家。
二人が気に入っていつも帯に挟んでいた鳥の根付が扉のすぐ外に落ちており、一羽むなしく夕日をあびていた。