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連載終了してから色んなサイトさんが閉鎖されたり、縮小されたりでなんだか寂しいです。
逆に「サイト数が減っても盛り上げたい」と妙なテンションが上がったりもしますが。
というわけで少なくとも年内どころか萌を吐き出しつくすまでは辞める気がありません。
そんな宣言。
では下からどうぞー。
ぱたぱたと軽い足音が土を踏む。
二つ、拍子のずれたその音に店主はおや、と眉を上げた。
「「ごめんくださあい」」
元気な声が重なる。
暖簾の下、ふわふわ金の髪を揺らす小さな頭が二つ並んでいた。
ここ数ヶ月の間にすっかりと馴染んだ光景だ。
「ん、と。黒様のお酒下さい」
二人で大事そうに抱えた徳利をそろそろと店主に渡す。
店主がそれを受け取り、酒を注ぐのを双子の子どもは煌煌とした瞳で興味深げに見つめていた。
最初に城の大柄な忍が子どもたちを連れてきた時には店主も客も皆驚いたものだった。
何せ金色の髪など見たこともなかったのだから。乱暴者と評判の忍者が子どもたちを養っていると聞いて、更に驚いたが。
けれど、子どもたちは忍者に大層懐いている様子で、しきりと忍者を「黒様、黒様」と呼んでは嬉しそうにしている。
そんな姿を見ているうちに、段々と店主も馴染み客もその姿に違和感を感じなくなっていた。
どうやら子どもたちも大事にされているらしく、最初の頃は棒切れのように痩せこけていたのが、今では顔も手足も子どもらしいふっくらとした丸みを帯びている。
忍者を慕っているのは変わらずで、十日に一度ほどこうして遣いに来たりもするようになっていた。
家の主に持って帰るための徳利を嬉しそうに眺め、小さな二つの手でそれを替わりばんこに抱える姿はいつしか店主や客たちにもすっかり見慣れたものだった。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
酒で満たされた徳利を手渡された二人が、ぺこりと律儀にお辞儀をする。
もしかしたらあの忍者が礼を躾けたのか、と想像すると可笑しさを耐え切れないのだが、行儀の良さには感心したものだ。
老齢の店主は目を細め、二人に手招きをする。
「?」
警戒心なくとてとてと歩み寄る子どもたちに、「駄賃だよ」と蒸かしたばかりの饅頭を二つ手渡す。
途端にぱっと顔が輝くのはその辺の悪餓鬼どもと同じで、子どものそんな顔は人を何ともいえず和ませるものだ。
「「ありがとおございます」」
嬉しそうに揃って頭を下げた二人が、仲良く饅頭を包んだ風呂敷と酒徳利を交代で持ちながら家路につくのを、店主はゆっくりと見送った。