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二次創作中心ブログ。 ただいまの取り扱いは忍者×魔術師。 妄想と現実は違う、ということを理解した上で二次創作を楽しめる方はどうぞ。 同人、女性向け等の単語に嫌悪を感じる方は回れ右。 18歳未満は閲覧不可。 無断転載禁。
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やっちゃった、な感のする黒双子話です。

ネタ元は「ROSE-WOOD」のモト様が昨年のクリスマスに書かれたお話です。
そのお話を「最初は黒双子で考えていた」というお言葉にうっかり妄想を暴走させ、「それ書いてもいいですか」とか口走った私に寛大にもご許可をくださいました。
設定などは基本的にモト様のお話と同じにさせていただいているため色々と被るところもあろうかと思いますが、ご本人様には一度お目通しをお願いした上でこちらにも掲載許可をいただきました。
いくら分割したとはいえ、こんな長文をメールで送るのは嫌がらせかお前、という突っ込みは無しで…。
本人が一番自覚しています。(ごめんなさいー!)

一度全体を見直してちょこちょこと書き加えるので、数話に分けてアップします。
大丈夫、ちゃんと三話で終らせるから。

あ、黒双子苦手な方は回れ右で逃げてください(笑)


カテゴリーにも「黒双子」を追加しました。
以前から書いていた黒白にゃんこと園児シリーズをこちらに移しています。


では、下からどうぞ。








色とりどりの花が咲き競うように、着飾った女たちが侍る。
だが、艶やかな着物とは裏腹に空気は澱み、濁り、甘やかな匂いでさえもどこか饐えたように重く、鬱陶しい程に纏わりつく心地さえもする。
時折あげられる嬌声さえも空々しく虚ろだ。
交わされる誓いも約束も、愛も、何もかもが偽りであり、塵芥よりも軽い絵空事。
そんな醜悪な模造品を寄せ集めた色里で、射抜くような金と蒼に心を奪われた。


いつもならば車の音が遠くから聞こえるだけで待ちきれないように玄関の扉をあける出迎えが今日はない。
既に夜半に近い時間とは言え珍しいことだった。
これはよほどへそを曲げているな、と車から降りた男はひっそりと笑う。
自分の持つ鍵で門扉を開けるうちに、玄関の扉がきぃっとかすかに軋んだ音を立て細く開けられる。
隙間からは外の様子を窺うようにこの家に住まう人間の顔が半分覗いていた。
夜目にも光る、金色の髪。
手にした洋燈から零れる灯りが揺れる。
意識すらせぬ内に男の体は寒さに固まっていたのだろう。玄関の隙間からちらちらとこぼれる灯りの温かさに肩から僅かに力が抜けた。
金色の髪の住人は男の姿を見止めると、一瞬驚きに目を見開き、それからすぐに、ふわりと微笑んだ。
「お帰りなさい、黒様」

男の名前を黒鋼、という。
若くしてのし上がった実業家であり、財界でその若さと強引とも言えるほどに手段を選ばぬ辣腕ぶりが人の口の端に上らぬ日は無い。
賛辞と嘲りと追従と。
出自すら定かではない成り上がりの若造に対する人々の目は冷ややかでありながら、それ以上にそこに己の得を見出すように冷徹に値踏みする。
羨望と共に恩恵に預かろうとする浅ましさに塗れた視線だ。
そんな目に四六時中晒されている男が、およそ常ならぬ愛人を囲ったとなると当然人々の好奇の種となる。様々な憶測が飛び交い、錯綜した。
ただ、いつも共通する幾つかの言葉は同じ。
異人。双子。男娼。
それが黒鋼という男の囲う愛人について知りうる数少ない事実だった。
驚き、蔑みつつも皆が好奇心を隠せず、何かと詮索をするのだが得られるものは少なかった。



招き入れられた邸内は仄かに暖かく、黒鋼は外套を脱いで差し出された白い手にそれを預けた。
「今日はもうこないかと思った」
そう言って穏やかに淡く微笑む金色の髪の住人の名はユゥイ。
黒鋼の愛人だ。
もう一人、ファイ、という彼の双子の兄が黒鋼の愛人として同じ屋敷に住んでいる。
二人揃って、とある娼館から黒鋼が身請けした。
「茶漬けでもなんでもいい、食うものをくれ」
唐突な訪問であり不躾な物言いの黒鋼であったが、ユゥイはくすくすと笑いながら台所に消える。
ひっそりと他の物音はしない。
ファイはもう寝ているのかも知れなかった。
ほどなくしてユゥイは深めの茶碗に軽く盛られた白米と、熱い茶、それに野菜の煮込みを持ってやって来た。
通いの家政婦はいるが基本的にこの屋敷の台所はユゥイが主なのだ。
食事をする黒鋼のために手ずから給仕をしながら、ユゥイは何も言わなかった。
「あいつは?」
「拗ねてるよ。黒様のくれたウイスキーボンボンやけ食いして不貞寝」
思わず眉間の皺が深くなる黒鋼に、ユゥイは仕方ないねえ、と笑った。
細められた瞳の色は蒼。けれど、ユゥイの蒼い左目は義眼だった。
「お腹がいっぱいになったら機嫌とってきてね?」
愛人のご機嫌取りも旦那様のお仕事だよ、と面白がるユゥイの瞳が猫のように煌いた。
時折こんな風に悪戯っぽい瞳で子ども扱いされるのだが、それが不快でないのが不思議でもあり、余人ではけしてあり得ないことでもあった。


ノックなど無用とばかりに部屋の扉を開ける。ユゥイの話ではファイの機嫌ははっきり言って芳しくはない、ということらしい。ノックで機嫌が直るわけもない。
部屋の中は真っ暗でカーテンの閉められていない窓からかろうじて外灯が差し込んでいる。
かすかな灯りに金の髪がキラキラと反射した。
ファイは寝台の上にうつ伏せている。本気で寝入ってしまうつもりはなかったのだろう。櫨染の着物を脱ごうとした気配はなく、寝転んだ拍子にでも足元が乱れたのか白いふくらはぎが覗いている。
あえて明かりをつけぬままに黒鋼は室内に足を踏み入れた。夜目はきく方だ。迷うことなくファイの突っ伏した寝台へ向かうと、その端に腰をかける。
スプリングの良くきいた寝台は黒鋼の重みを受け止めて深く沈んだ。
ぎしりと傾いだ寝台につられてファイの肩がぴくりと揺れた。逃げ場のないようにその背中の上から覆いかぶさりながら耳元に低い声を流し込む。
「おい、起きてるんだろうが」
今度こそ傍目にも分かるほどに肩がびくりと震えた。
笑みの色を濃くして、伏せたままのファイの上から耳朶を食む。
かすかに呻くようにファイの喉が戦慄き、けして眠りの淵にいるのでないことが分かる。
「拗ねるな」
そう耳に直接吹き込むと堪らなくなったのか、ファイが身を捩る。
黒鋼を肩越しに振り返る瞳は一対の蒼。
光源は僅かであったが、黒鋼の目にはずっとうつ伏せていたせいで赤くなったファイの顔色も良く見える。
それが一層拗ねた子どものようで、もう一度「拗ねるな」と囁いた。
「…4回」
不自然な体勢のまま、ファイがポツリと呟く。しばし無言だったのだが、このままでは埒があかないと判断したのか。それでもようやく口を開いたことに黒鋼もほっとする。
「4回だよ、黒様が約束をすっぽかしたの」
黒鋼がこの屋敷に訪れるのは、少なくとも週末に一度だった。それが四度もない、ということはひと月以上も顔を出していなかったということだ。
多忙だと伝えていたとは言え、さすがに双子も機嫌を損ねておかしくはないと思っていたが。
その詫びにと洋酒をきかせたボンボンや菓子を贈ったのだが、この様子ではその効果もあったのかどうか怪しい。
そんなことを考えているうちについ、とファイが顔を背ける。いつもふわふわと笑ってばかりいる人間の顔から笑顔が全く見出せないという事態は、少しばかり黒鋼の胸をちくりと刺した。
「別に良いけどね。
オレとユゥイのすることは、ここで黒様の性欲の発散に体を差し出すことだものー」
「本気でそう思ってんのか?」
黒鋼は呆れとともに軽いため息を漏らす。
ファイは答えない。
「本気か?」
一段、低くなった声色にファイがびくりと肌を粟立たせた。ほんのかすかにではあったが、声の表面に滲む黒鋼の苛立ちを敏感に感じ取ったのだろう。
本気の怒りに程遠いにはせよ。
数瞬の沈黙がおりる。
多数の人間はここで黒鋼の気勢に飲まれて押し黙ってしまうかあからさまに卑屈な態度になるのだ。
だが、双子は違った。
気丈にも笑みを返すと、ファイはまるで挑発するかのように黒鋼の上唇をすっと、その細い指先でなぞった。
「…違うって言うんなら…信じさせてみてよ」
ちらりと自分の唇を舐めるその仕種は気まぐれな猫のようだった。
上等だ、と低く笑った黒鋼に帯を解かれながら、思い出したようにユゥイは?と尋ねる。
下にいる、と答えた黒鋼になんで一緒に連れてこなかったと文句を言いながら、肌に触れる手を拒む気配はない。
「ちゃんと後であいつも良くしてやる」
そう宥めた黒鋼に、ならば許す、とばかりにファイの方から積極的に黒鋼の上着に手をかけてくる。
ちらりと薄く開いた唇から覗く舌が、艶かしいほどに赤く、瞳を惑わせた。


 

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